【ECコンサルタントによる「勝手にECサイト分析」】□□52 ジャパンEコマースコンサルタント協会 笹本克特別講師〈テル鮮魚「五島列島海鮮工房 テル鮮魚」〉/客観的な視点で地元の価値を知る

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「五島列島海鮮工房 テル鮮魚」のトップページ

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長崎市から海を越えて西に100キロの離島、五島市福江島。テル鮮魚(本社長崎県)はこの島に所在している。
 五島列島は、「漬物を買うお金がないから刺身でも食べていて」という話があるぐらいの海産物の宝庫であり、九州においては「五島産」の海産物はトップブランドの一つとして認知されている。
 「地元の海産物をネットで全国に売れないだろうか」と思った現店長の末留直樹氏。大らかな土地柄で育った彼は閉所恐怖症だった。車は平気だが、鉄道や飛行機に乗るとめまいがしたり動悸が激しくなるのである。
 「テル鮮魚」のネットショップ立ち上げは99年。当時はネットショップの黎明期でネットショップ関連の書籍も充分ではなかった。販売ノウハウはもちろん、ソフトやASPなどもまだまだの時代。
 そして、離島の福江島で得られる情報はごく限られたものだった。とりあえず自力でショップを作ってはみたものの、ほとんど売れなかった。彼には「知識と情報」が絶対的に不足していた。
 ネットショップの立ち上げから数年、微々たる売り上げが続いていた。これを打破すべく、末留氏は閉所恐怖症の苦痛に耐えて、「数時間かけて」福岡市で開催した私の講座を受講してくれた。
 さらにはネットショップのコミュニティーに参加し活発に情報交換を行い、地元の離島では不足していた知識と情報をどんどん吸収していった。
 情報交換や受講などを通じて彼が得たものがもう一つある。客観的な視点=他所から見た地元の価値である。
 福江島には日本一きれいな浜辺があり、真ガツオの2倍の値が付く場合もある地元の羽カツオは、太平洋岸では捕れないという希少価値の高さ。当たり前すぎて見逃していたその価値に気付き、ショップに掲載したらテレビや雑誌などの取材依頼が舞い込んだ。
 黎明期のビジネスは試行錯誤の連続。業界全体としても経験の蓄積が充分になく、知識と情報はごく限られたところにしかない。
 正解が見えないときに道を見出す手段はただ一つ。「強いモチベーション」である。


〈筆者プロフィール〉
ささもと・かつ
 全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務めている。DeNAやヤフーのショッピング事業部スタッフへのレクチャーや、ドリームゲートの起業講座のほか、上場企業から中小企業までコンサルサイトの累計は約600社に至る。多岐にわたる業種でのコンサルティング実績も豊富。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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