【ECコンサルタントによる「勝手にECサイト分析」】□□207 ジャパンEコマースコンサルタント協会 笹本克特別講師・参事〈「国友農園」〉/口コミで希少なお茶の販路を拡大

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「国友農園」のECサイト

「国友農園」のECサイト

 「国友農園」の茶畑は、人家のない高知県の山奥にある。JAS認定の有機無農薬で茶を栽培している。
 お茶は元来、山岳地の岩場の陰地に自生する。野生種の山茶は根が伸びて岩盤に達すると、根から酸を出して岩を溶かしながら吸着し、岩のミネラルをも吸収して成長する。
 味は平地で栽培されている藪北茶などとは異なり、ミネラル感があるすっきりとした味になると同社代表の国友昭香氏は語る。
 そんな野生種の茶にほれた国友氏は99年、山茶の研究を始め、06年には山茶の試験栽培を始めた。
 茶は同じ株の花同士では実を結ばない異株結果の木である。このため野生種の茶は、それぞれの株ごとに葉の形や色、枝ぶりや芽立ちの時期も異なる。もちろん味や香りなども株ごとに独特となるため、栽培も難しい中で研究を重ね、現在の味と香りにたどり着いた。


■ブログ、イベント継続

 国友氏に「一般にはあまり知られていないお茶を販売するのは大変だったのでは」と尋ねたところ、「今まで営業らしい営業はしていない」との回答。地元高知ではおばあちゃんの味がするお茶といわれ好評を博している。
 「感性の高い客層」を中心に、紹介によって販路が広がっていき、現在では都内の百貨店や一部海外でも販売されるようになったとのこと。
 生産者が運営するECサイトとして、通販だけでなくリアル販売店へのリンクも掲載している。サイトには山里体験というカテゴリーがあり、茶畑体験や山中の築140年がたつ家をカフェにするなどのイベントも不定期に行っている。ブログは07年から現在まで書き続けている。


■地方ならではの苦労

 サイトの運営には地方ならではの苦労も多い。同社にも担当者はいるが、約10年の間にサイト制作の外注先が、スキル不足や倒産などで4社も変わっているとのこと。
 ECにおける人材不足は地方ほど深刻ということであろう。良いモノが売れるとは限らないといわれる中で、特出した商品力が販売を伸ばした例としては昨今ではまれかもしれない。


〈筆者プロフィール〉
ささもと・かつ
 全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体でもEC関連の講演や講師を務めている。DeNAやヤフーのショッピング事業部スタッフへのレクチャーや、ドリームゲートの起業講座のほか、上場企業から中小企業までコンサルサイトの累計は約600社に至る。多岐にわたる業種でのコンサルティング実績も豊富。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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