【千原弁護士の法律Q&A】▼435▲ 契約書面の不備で工事代金が支払われない(2025年8月28日号)

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【質問】



 個人宅のリフォームを行う訪問販売会社を経営しています。工事を予定どおり完了し、工事代金約500万円をお客さまに請求したところ、なかなかお支払いいただけなかった案件がありました。もめていたところ、先方に弁護士が入り「契約書面が不備なので、全額の支払いに応じない」という、とんでもない主張をしてきました。当社で契約書面を確認したところ、確かに、支払方法や支払期限が空欄で、工事内容が「一式」で記載されるなど、かなり雑な内容でした。当社においても反省すべき点はありますが、工事自体はしっかりと行われており、当社側の原価、経費も多くかかっています。いくらなんでも一銭も支払わないという対応には納得がいかず、当社も弁護士に依頼して訴訟を行うことを考えています。ご意見をいただけないでしょうか。(リフォーム訪販会社社長)

【回答】訴訟しても敗訴の可能性高い



 結論として、訴訟提起を行うこと自体は選択肢としてあり得ますが、「金銭が回収できずに敗訴するリスク」も想定する必要があります。
 最近、同種事案について、過去の判例調査を行いましたが、特商法における「契約書面の不交付とクーリング・オフ」については、業者側に厳しいものでした。
 まず、貴社のケースのように、最も重要な記載内容の一つである「工事の内容」の特定が不十分で「一式」でしか記載されていない、あるいは、必要な記載事項が空欄である場合は、複数の裁判例で「不備書面」という認定を受けています。
 「不備書面」であるということは、クーリング・オフの起算点になるとの評価から考えると、「書面を交付していない」ことと同じに扱われる、ということです。
 訪問販売におけるクーリング・オフ8日間の起算点は契約書面を交付した時点とされています。
 「不備書面」を交付しても「交付」とは認められず、

(続きは、「日本流通産業新聞 8月28日号で)

<プロフィール>
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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