【千原弁護士の法律Q&A】▼282▲ 法務責任者個人にも業務禁止命令は適用か

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〈質問〉

 特定商取引法適用会社で法務部長を務めています。コンプライアンスには細心の注意を払って営業していますが、全体の取引件数が多いため、どうしても消費生活センターへのクレームは入ってしまいます。PIO—NET情報を定期的に調べていますが、年間数十件単位で推移しています。業界団体の人に意見を聞いたところ、この件数だと、業務停止命令を受けるリスクはあるといわれました。最近は、業務停止命令と一緒に、個人に対して、業務禁止命令が発令されるケースも多くなっていると思います。そこで、お聞きしたいのですが、万が一、当社が業務停止命令を受けた場合、私のような法務責任者の従業員に対しても、業務停止命令を受けた責任があるとして、業務禁止命令が発令されることはあり得るのでしょうか。(訪販会社法務部長)

〈回答〉 法務責任者が対象となる可能性は低い

 ご質問のとおり、2017年12月施行の改正特定商取引法に基づき、会社への業務停止命令が出るときは、代表取締役などの個人に対して、業務禁止命令を出せるようになりました。業務禁止命令では、会社の業務停止期間中に、指名された個人が、会社を設立して同種の営業を行うことを禁止します。

 今では、業務停止命令と業務禁止命令がセットで発令されるのが、一般的な運用となっています。業務停止3カ月といった比較的短期間の処分の場合でも、個人に対する「業務禁止命令」が同時に発令されています。3カ月の間に処分を受けた個人が新たに会社を設立して営業を行うことは、現実的には考えづらいことから、問題会社の個人名を公表して処分する「懲罰的な意味合い」も強いように思います。

(続きは、「日本流通産業新聞」4月4日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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