【千原弁護士の法律Q&A】▼270▲ 自動配信メール、法律上問題はないか?

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 当社はネットショップを営んでいますが、登録してもらった読者にメルマガを配信しています。メルマガ配信には、事前に相手の承認が必要ということが特定電子メール法で決められているため、今のところ、ネットショップの会員登録時にメルマガを希望した方だけに配信しています。当社は、メルマガの読者をもっと増やしたいと思います。そこで、ネットショップで購入されたお客さまに送信する、注文完了や発送完了の自動配信メールに、「新商品のお知らせ」や「メルマガ登録の勧誘」の内容を入れ込むことを検討しています。大手通販会社の自動配信メールにも、そのような内容が含まれており、問題ないと思いますが、念のため、法律上問題がないかを知りたいと思います。(ネット通販会社社長)
[本文]
〈回答〉 「付随広告」の範囲であれば問題なし

 結論としては、貴社のご見解どおり法律上問題はありません。

 こちらの質問をいただいて、総務省および消費者庁が発行する「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)を検討し、また、総務省・消費者行政課の担当者からも聴取しました。

 まず、前提として、注文完了や発送完了の自動配信メールに広告を貼り付けたものが、特定電子メール法(「本法」といいます)が規制するところの「特定電子メール」に該当するか、が問題となります。
 これについて、本法は「特定電子メール」を、「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」である送信者が、「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」をいうと定義しています。
 そこで、自動配信メールは、ネットショッピングを行った消費者に対して購入商品の詳細等を告知するため、自動的に送信されるものであり、「広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」ではないことから、「特定電子メール」には該当しないとの結論となります。
 すなわち、本法は、オプトアウト規制について、「契約の申し込みをした者又は契約を締結した者に対し当該契約の申し込み、内容又は履行に関する事項を通知するために送信される電子メールにおいて広告又は宣伝が付随的に行われる場合」には、規制が及ばないと規定しています。
 自動送信メールは「当該契約の申し込み、内容又は履行に関する事項を通知するために送信された電子メール」に該当するので、同メールにおいて広告や宣伝が「付随的」に行われる限り、問題はないことになります。

 そこで、新商品のお知らせや、メルマガ配信の希望登録を促すことが「付随的」に該当するかですが、この「広告又は宣伝が付随的に行われる場合」とは、ガイドラインによると、「広告・宣伝とは別の目的を主目的として送信される電子メールに付随的に広告・宣伝が含まれる場合であって、それが社会的に相当なものとして認容されているようなとき」をいうと解説されております。そこで、この解説を前提とする限り、貴社のプランは「広告又は宣伝が付随的に行われる場合」に該当すると考えられます(行政からの聴取結果も同様でした)。
 そこで、貴社のプランは、社会通念上常識の範囲内での「付随広告」とされる限りにおいて、問題はないと思われます。「常識外」とは、たとえば、自動配信メールが広告目的で何度も行われるなどのケースなどが考えられます。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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