【千原弁護士の法律Q&A】▼350▲ クロスリクルート行為の会員の除名処分。リスクは? (2022年1月27日号)

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〈質問〉

 ネットワークビジネス(NB)会社ですが、有力リーダー会員Aが、当社の他の会員に対して、他のNB会社の勧誘、クロスリクルート行為をしているといううわさがかねてからあります。除名処分にしようかと思ったりもしますが、決定的な証拠がないため、除名処分にして、もしAから訴えられた場合、当社が敗訴して大きな損害を受けるのではないかとためらっています。先生は多くの裁判を経験されていると聞いています。当社側のリスクについて教えてください。(NB会社社長)

〈回答〉 除名訴訟は会社側が圧倒的有利

 私はこれまで、NB会社による除名を不服とする会員から起こされた多くの訴訟(以下「除名訴訟」)に継続的に対応してきました。この20年近くの間で、50件以上に対応してきたと思います。この中で敗訴判決を受けるなど、会社にとって深刻なダメージにつながった案件は一つもありません。率直な感想として、除名訴訟は、圧倒的に会社側に有利という印象です。

 会員の訴えは(1)会員としての地位の確認(2)不当な処分による損害賠償請求─という二つの部分からなります。

 このうち(1)の「地位確認」ですが、有力な対抗手段として、民法651条1項に基づく委任契約としての会員契約の解除を行うという構成があり得ます。
 連鎖販売取引に関連する著名判例である東京地判平成23年12月19日判決(判例タイムズ1372号143頁)は、連鎖販売契約について、法的性質が「委任契約」であると明示しています。
 この場合、委任者である会社は、会員の規約違反の有無にかかわらず、

(続きは、「日本流通産業新聞」1月27日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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