【千原弁護士の法律Q&A】▼273▲ 営業車両の事故費用で社内規則設けたが…。

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〈質問〉
 当社はたくさんの営業車両を利用しての訪問販売を行っています。ところがこのところ、営業社員の不注意による事故が増えていて困っています。事故の増加を防止するため、車両事故の修理費用について、「免責3万円までの事故の場合、本人の自己負担とする」という社内規則を設けて運用することを現在検討しています。こうした規定を設けることについては、「何か問題があるのでは?」という声が社内から出ておりますので、ご意見をいただければと思います。仮に問題がある場合、規則は定めずに、修理費用全額を請求することは問題ないでしょうか。もともと当社では、駐車違反などの罰金の場合、社員の負担としていますが、こちらは問題ないですよね。こちらもご確認ください。(訪販会社社長)

〈回答〉 賠償額の一部請求は可能だが

 ご質問の件ですが、労基法の点を考慮する必要があります。
 貴社のプランのように、事前に就業規則等で賠償金額(修理費用)を定めておくのは「損害賠償予定の禁止」を定めた労基法16条に違反すると思われます。会社が従業員に対する罰金を定めることを自由にしてしまうと、極端な話、「遅刻を3回したら給料はゼロ」のような労働者を害する規定もまかり通ってしまうからです。
 したがって貴社が検討されている規則を定めるのは法律違反となってしまいます。

 一方、事故後に、従業員に対して、賠償額の「一部」を請求することは可能です。もっとも、判例上は、従業員に対する賠償は大きく制限されており、従業員の過失が極めて大きい事案でも4分の1程度しか認められていません。また、給料からの相殺は法律で禁止されています。

(続きは、「日本流通産業新聞」11月15日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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