【千原弁護士の法律Q&A】250 和解書締結は顧客の近親者でも有効か?

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(質問)
 弊社は宣伝講習販売をしています。高齢のお客さまAさまの件で先日、消費生活センターから、返金の申し入れの連絡がありました。Aさまのご長男のBさまから、「Aさまが認知症だった」との申し出があったということです。弊社としての言い分はあるのですが、センターが介入したこともあり、事を荒立てたくはありません。円満に和解することとして、3年間の購入代金の60%を返金する形で、条件が決まりました。このようなケースでは和解書を締結することにしているので、センターに、Aさまに署名、捺印をいただく形での和解書をご提示したところ、センターは「Aさんは認知症なのに、Aさんに署名捺印させる合意書で良いのか」と注文を付けてきました。センターの担当者は、そもそも和解書の締結自体を不要と考えているようで、どうしてもというなら、ご長男のBさまとの間で、という考えのようです。弊社としてはAさまが実際に認知症かの確認はできない状態ですし、そもそもご本人でもないBさまとの和解は有効なのでしょうか。
              (宣伝講習販売会社社長)

”認知症の場合、後見人との和解が正式な方法”


(回答)
 本件ですが、ご理解のとおり、ご本人ではないBさまとの和解は、Aさまとの関係では効力がありません。実際にAさまが認知症であれば、本来は、家庭裁判所に対して後見の申し立てを行い、後見人を当事者として和解をするのが正式の方法となります。
 仮に、ご長男であるBさまを「代理人」とする形で和解をしたとしましょう。このケースでは、Aさまが本当に認知症であるならば、Aさま↓Bさまへの委任行為自体がそもそも問題ということになります。したがって、言い分にこだわる消費生活センターに対して貴社が、「それであれば当社としては、正式な後見人との間でしか和解ができません」と主張するのは、法的には極めて正当ということになります。

(続きは、「日本流通産業新聞」12月7日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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