【千原弁護士の法律Q&A】▼363▲ パソコン使えば通信販売契約になる?(2022年8月4日号)

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【質問】

(1)当社は、太陽光発電、リフォーム工事等の訪問販売を行っています。今回、販売員に、タブレット端末を渡し、新たな販売形態を導入したいと考えています。具体的には販売員が(1)タブレットを持ち込み(2)タブレットをお客さまに示して(3)お客さまに必要事項を入力していただき(4)その内容をお客さまに送信をしていただき(5)契約締結─という形を考えています。これならば、通信販売としての契約となり、訪問販売にはならないという前提なのですが、いかがでしょうか。(太陽光・発電リフォーム訪販会社社長)

(2)当社はネットワークビジネス(NB)会社です。当社の会員が、お客さまA(当社の愛用者会員)宅を訪問し、Aさま宅にあるパソコンを自分で操作して、当社に対して、Aさまの商品発注を繰り返していた案件が、Aさまの親族からのクレームがきっかけで判明しました。これは、法律上、何らかの問題がないでしょうか。(NB会社社長)

【回答】 いずれも「偽装通販」とも言える事案

 二つのご質問は、いずれも「偽装通販」とも言える、通信販売と訪問販売との境界事案なので、まとめて取り上げて回答させていただきます。

 上記の2例は、いずれも、お客さまがパソコン等を利用して、申し込んでいる形式を取っており、訪問販売ではないとの主張は一見考えられると思います。
 訪問販売でなければ、仮に通信販売規制があったとしても、「契約書面の交付義務」や「8日間のクーリング・オフ」などの規制はないため、会社側にとっては、とても有利になると思います。

 しかしながら、上記は、いずれも明らかに勧誘者の「働きかけ」がクロージングに大きく影響しており、客観的に見て、「通販に過ぎない」という主張は無理があると思います。

 この点、2022年2月9日に、消費者庁から通達が公表されており、上記2例のような「営業所等以外の場所でウェブ等により申し込みを受けた取引」が「訪問販売に該当する」ケースについての考え方が公表されました。

(続きは、「日本流通産業新聞」8月4日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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