【人】 〈オプスデータ 中野賀通代表取締役社長〉/地方の惨状知り、地域課題解決型サブスク開始

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 サブスクリプション(サブスク)支援最大手のテモナ取締役CTOなどを歴任してきた中野賀通氏は21年1月、自らが代表を務めるオプスデータで地域課題を解決するためのサブスクサービス「WAKEAU(ワケアウ)」の提供を開始した。コロナ禍に悲鳴を上げる地方の状況を知り、サービスを立ち上げることを決めたという。
 「コロナで苦しむ地方の方から多くの救援要請が寄せられた。感染者数は都市部の方が多いものの、コロナのしわ寄せは地方に来ていると感じた。行政や民間の支援策はあるが、お金になるところにしか資金が回らず、ITリテラシーが低く、資金力もない地方の生産者や中小企業は何も打つ手がない状況だった」(中野氏)と振り返る。
 「WAKEAU」は、地域の魅力を詰め込んだ「お楽しみボックス」を届けるサービス。第1弾で始めた福岡・糸島では、月額5000円で地域産品の詰め合わせを提供している。
 「名産品や特産品と一緒に地域の魅力を紹介する同梱物が届く。コンセプトは『きっと、もっと、悲しみも喜びも分け合える』。商品を購入するというより、その地域を支援するプロジェクトに参加するといったイメージだ。地域からすると、定期的に商品をお届けすることで、ストック型の収益を確保でき、さらに地域の魅力を参加者に伝えやすいサービスだ」(同)と語る。
 地域をパッケージング化するため、その地域が一丸となって取り組むことができる。生産者の商品供給力にばらつきがあっても補い合うことも可能だ。
 ストック型のビジネスモデルのため、支援者が増えていくと先々の収益が見え、生産者が後継者を見つけやすくなったり、銀行から借り入れしやすくなったり、ブランディングしやすくなったりするという。
 「生産余力があれば、『WAKEAU』の利用者だけが特別価格で購入できる販売ページを設けてもいい。利用者だけに特別な現地で体験できるサービスを提供し、地域に足を運んでもらうように促すこともできる。地域で交流を深め、第2の故郷としてワーケーションしてもらったり、地域課題の解決に一緒に取り組んだりしてもらえるような関係性を構築できるかもしれない」(同)と展望を語る。


〈プロフィール〉
中野 賀通(なかの・のりゆき)氏
 工業大学附属の高校に教員として4年ほど勤務。メール配信システム大手のエイジアでクラウド事業の立ち上げや、国内大手企業やスタートアップの支援に従事。15年1月に技術顧問先のテモナに入社。開発、事業、組織拡大に貢献し17年にマザーズ上場。19年東証1部に鞍替え。20年12月、テモナの取締役CTOを退任。現在、データサイエンス・地方共創事業を展開するオプスデータやスタートアップ支援のハンズオンなどの代表を務めている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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