【ニュースの深層】□□100〈デジタル広告規制〉 広告主が出稿先を選ぶ時代に

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 デジタル広告の規制の方向性がまとまりつつある。政府が7月に公表した成長戦略実行計画案では、デジタル広告の透明性・公平性確保を目的に、広告を配信するプラットフォーマーを、デジタル・プラットフォーマー(DP)取引透明化法の適用対象とする方針を掲げた。プラットフォーマーに対して、広告の閲覧数に関する情報などの開示を義務付けるようにするとみられる。デジタル市場競争会議(菅義偉議長)が今冬に最終案をまとめる予定の報告書の中で、明確な方向性が示されるとみられる。識者からは「閲覧数などの情報が開示されるようになれば、広告主が『良い媒体』を選別する傾向に拍車がかかるのでは」という声も上がっている。

 デジタル市場競争会議が6月にまとめた「デジタル広告市場の競争評価中間報告」では、これまでの運用型デジタル広告の問題点として、水増しされた、PV数やクリック数を基に、入札金額が算定された事例があったことを挙げていた。その上で、広告価格が適正であることが、入札時点で広告主に分かるような仕組みの導入を検討する方針を、中間報告では示していた。
 首相官邸は7月17日の未来投資会議で、さらに成長戦略実行計画案を公表。5月に成立したDP取引透明化法の規制対象に、広告配信を行うプラットフォーマーを追加することも検討する方針を掲げた。(1)プラットフォーマーに対して閲覧数の水増し対策などに関する情報開示を促す(2)広告への反応データの広告主への提供をプラットフォーマーに求める─などをルール化することを目指すとしている。
 内閣府によると、成長戦略実行計画案の目標が、デジタル市場競争会議がまとめる最終報告の中に、盛り込まれる可能性があるとしている。
 デジタル広告に詳しいIntegral Ad Science (IAS、本社米国)のシニアアカウントエグゼクティブ&エバンジェリストの山口武氏は、「政府がデジタル広告のプラットフォーマーに情報開示を求めることで、広告主や広告代理店が、出稿している運用型のデジタル広告で、自社の広告がどこに出稿されているのか分かるようになる可能性が高い」と話す。「出稿媒体がどこか分かれば、社会問題となった『漫画村』のような、広告主のブランド価値が毀損されるような媒体社への掲載を回避できるようになる。広告単価が高くても、媒体を選ぶ風潮がデジタル広告市場に広がるのではないか」(同)とも話している。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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