【ニュースの深層】□□118〈東京都 太陽光パネル設置義務化へ〉 検討会で調整 コストの課題も(2022年5月12日号)

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 東京都は、一定条件を満たした新築建物に太陽光パネルの設置義務を設ける検討会の最終調整に入った。昨年11月から「カーボンハーフ実現に向けた条例改正のあり方検討会」として進めてきた。今年3月23日の第5回検討会を最後に、パブリックコメントを求めつつ、条例改正の最終調整に入る。都は、30年までに、00年対比で温室効果ガスの排出量を50%削減する「カーボンハーフ」を掲げている。太陽光パネルの設置義務化に伴い、建築コストの増加と消費マインドの冷え込みといった課題も残る。

■設置は住宅供給側に

 都が3月23日に実施した検討会の資料によると、太陽光パネルの設置は、住宅と住宅外の二つに分けられる。住宅は分譲や注文住宅を提供するハウスメーカーなど住宅供給事業者が対象で、住宅外は不動産のデベロッパーが対象となる。
 二つに分けられた事業者の中でも、住宅(注文や分譲含む)や住宅以外に関わらず中小規模の建築物(1棟の延床面積が2000平方メートル未満の建物)のほか、延床面積2万平方メートル以上を供給する事業者を対象としている。毎年多数の新築物件を建設している大手ハウスメーカーやビルダーは、自動的に太陽光パネルを設置する義務が課せられることになる。
 戸建て住宅に限らず太陽光パネルの設置は、屋根に設置できる面積の大きさや日照時間によって効果が左右されてしまう。現時点では、建築場所も含めた制度設計も重要なポイントとなりそうだ。
 今後、都内で新築住宅を購入する際は、費用の増加が見込まれる。コスト増に伴う消費マインドの低下も懸念される。現在のところ、太陽光パネルの設置義務に対する補助金は協議されていないが、今後議題に上がる可能性は高く、最終的なとりまとめの内容に関心が集まりそうだ。


■販売店にメリットも

 戸建て住宅に太陽光パネルの設置義務が進むことで、太陽光発電や蓄電池を販売する事業者にとっては、追い風となる可能性がある。
 太陽光パネルは蓄電池とのセット販売が望ましいが、太陽光パネル単体の販売では、価格の下落が進んでいることもあり、販売店にとって利益が薄かった。蓄電池は、自家消費を促しつつ、災害時に役立つアイテムとしてここへきて注目が集まっている。蓄電池だけでなく、太陽光パネルが屋根に付いた「ソーラーカーポート」や、市場拡大が見込まれる電気自動車に関連にした商品も合わせて提案ができる。
 販売店は、ハウスメーカーやビルダー、デベロッパーとの提携もすでに進んでいる。太陽光発電業界全体に、設置義務化は影響を及ぼしそうだ。

今後の条例改正までの流れ(東京都の資料参照)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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