【ニュースの深層】□□103〈東京都、高齢者見守りネットワーク構築〉/24年度に全区市町村で導入へ

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 東京都内に62ある区市町村の消費生活部門が福祉部門と連携し、60歳以上の高齢者に対する消費者被害を防止する「見守りネットワーク化」が進んでいる。2016年度から開始し、19年度は35区市で導入した。24年度末までに都内全域の区市町村に広げる。6年前からは、ヤクルトの販売会社やワタミなど高齢者と接点を持つ民間事業者とも連携し、高齢者に啓発パンフレットを配布する活動も展開。都では消費生活部門だけでなく、福祉部門や民間事業者と連携を強めることで高齢者の消費者被害の未然防止につなげたい考えだ。

 東京都が2016年12月に策定した4カ年の年次計画「2020に向けた実行プラン」に、都内の区市町村の主に福祉部門と消費生活部門が連携して、高齢者の消費者被害を防止するために連携した「ネットワーク化」が盛り込まれた。背景にあるのが、全体の相談に占める60代以上の高齢者の件数が全体の4割を占めている現状がある。19年度は前期比7・4%減だったものの、2年連続で5万件を超えるなど水準は高いままだ。
 ネットワーク化は、区市町村が主体的に行う施策。地域生活支援センターや介護事業者、福祉施設を運営する事業者とつながりのある福祉部門と消費生活部門が連携を図ることで、消費者被害を事前に食い止めようという試みだ。例えば、民生委員などが高齢者宅を訪問した際、健康食品の請求書や商品の箱が積み上げられていたり、周辺住民からの情報なども踏まえて被害の予兆を確認した場合は、地域の消費生活部門に連絡するといった活動を想定する。
 ネットワークによる取り組み状況は、東京都消費生活総合センターの活動支援課が各市町村へチェックシートで毎年確認している。
 20年度までに62区市町村のうち35区市がネットワーク化を構築。ネットワーク化の基準として、福祉部門との連携体制▽住民への周知と見守り人材の育成に関する具体的な取り組み─の2点を判断材料にする。
 「区市町村によって連携へのハードルを感じているところもある」(活動支援課)という課題も挙がっており、19年秋からはアンケートだけではなく、職員が直接出向いてヒアリングやアドバイスなどを行うアウトリーチ活動を始めた。ヒアリングを通じ、導入した区市町村の事例を共有したり、課題を解決することでネットワーク化を進めるのが狙いだ。
 都では、高齢者宅を訪問する際に使う消費者被害の啓発グッズを毎年制作していく。今年度は注意喚起の文言を記載したタオルを作り、未構築の区市町村の民生委員などが高齢者宅を訪問する際に配布するという。こうしたコストは都が負担する。


■ヤクルト、ワタミがチラシ配布

 都では、区市町村だけではなく、高齢者と接する機会の多い事業者との連携にも力を注ぐ。「悪質商法注意喚起プロジェクト」として、毎年9月から12月まで、悪質商法に関するリーフレットを約16万部配布した。今年で6年目となり、宅配や配食などで直接家庭に訪問する事業者が声掛けをしながらリーフレットを手渡ししている。
 今年の連携事業者はヤマト運輸、生活協同組合、シニアライフクリエイトや武蔵野フーズ、ベネッセパレット、ワタミなどの配食事業者のほか、東京ヤクルト販売など。都では「協力事業者を増やして、積極的に連携を図っていきたい」(同)としている。都内に高齢者の顧客を持つ事業者との連携を図ることで、高齢者の見守りネットワークの強化を目指していく。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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