【ニュースの深層】□□84〈厚生労働省 高齢者医療で初の指針案〉/医師が健食中止指示も

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 厚生労働省は3月9日、「医師が患者のサプリメントなどの服用状況を把握すべきだ」などといった内容を、国として初めて盛り込んだ指針案を、有識者の作業部会で示した。部会は同日、指針案を了承した。医師が患者の健康食品の服用状況を確認した結果、服用中止を促したり、健食事業者に問い合わせたりするケースが増える可能性がある。

 厚労省が示したのは「高齢者の医薬品適正使用の指針(案)」。一般成人よりも薬物の影響を受けやすい高齢者が、複数の医薬品を服用することで起きる副作用を解消することなどが、同指針の主目的だ。指針案では、医師や介護士などの医療職に対し、患者に対する医薬品の処方情報を把握するよう求めており、医薬品と一緒に服用することで副作用を生む可能性のある「いわゆる健康食品」の服用状況についても、「把握することが重要」だとの見方を示している。
 医薬品・サプリメントなどの服用物の相互作用を考慮して、服用物の効果や有害作用を医療職がモニターし、場合によっては患者に、服用の中止や減量、代替薬への変更を勧めるよう提言している。
 なお、指針案では、重篤な薬物有害事象を誘発する恐れがある健康食品の例として、ビタミンKを多く含むサプリメントなどを挙げている。
 厚生労働省では、「あくまで『医師などが患者の処方情報を把握することが重要である』という指針であって、一概に一般医薬品や健康食品の服用を止めることが目的ではない。ただ、服用物の相互作用によって、調整が必要だと医師が判断する場合もある」(医薬生活衛生局)としている。
 今回の指針案は、健康食品業界にとって、大きな打撃になりかねないとする見方も業界内にはある。(一社)日本健康食品規格協会の池田秀子理事長は「これまでは、高齢者がよく分からないまま健康食品を飲んでいるケースも多く、しっかりとした調査もなされてこなかった。一方で、患者に健康食品の服用を止めさせたところ、数値が正常域まで改善したといった声を医師から聞くことも少なくなかった。事業者は今後、医師に対して自社の商品に関する情報を提供できる体制を構築する必要がある」と話している。
 厚生労働省は3月から4月にかけて、本指針案に対するパブリックコメントを募集し、その結果などを踏まえ再度検討会を開催する予定。検討会での了承を得たのち、全国の医療職に向けて周知を開始するとしている。周知の開始は5月ごろをめどとしているという。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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