【EC注目株】第43回 一休/高級ホテルの潜在ニーズ効果で飛躍の宿泊予約サイト

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千葉氏

千葉氏

宿泊予約サイト「一休.com」で知られる一休(2450)は、1998年に現社長の森正文氏が設立した。「人生は一度。自らの手で事業を」という思いが募り、事業も定まらぬ状況で日生を退職しての脱サラ起業だった。手元資金は約3000万円。
 これは、と食指を動かした事業があったが資金不足。株式投資で増殖を試みたが逆に2000万円の損。そんな折り、人脈から夜桜見物に好立地の「ハイアットリージェンシー東京(新宿区)のスイートルームを売ってみないか」という話が舞い込んだ。
 米国でオークションサイトブームが起きていた時期、楽天がオークション事業に本格参入した頃でもあった。話に乗った。結果は50万円也で件のスイートルームの売りに成功。実績がホテルからの「スイートルームだけでなく他の部屋も売ってほしい」につながった。森氏は高級ホテル・旅館事情を徹底的に調べた。
 これはいける、と判断しネットに通販サイトを立ち上げたのは2000年。3カ月で単月黒字、1年で累損解消も実現し賞与の支給に至った。高級ホテルの潜在ニーズ効果やPC時代本格化という時流も幸いしたが、評価すべきはその営業姿勢。森氏を含め3人態勢でホテル開拓に臨んだが、そこにはIT関連企業の起業では嗅ぎえない〝泥臭さ〟があった。森氏は自らに言い聞かせるようにいざ出陣の折りには「元は取って戻れ」とげきを飛ばした。
 地方開拓では例えば「誕生日割引付航空券を活用しろ」と指示、必ず「ホテルとの商談の中でライバルの存在を聞き出せ。そしてそっちにも足を向けることを忘れるな」と厳命するといった具合だった。
 実績が顧客を呼び込む好循環が生まれ、取締役管理本部長の漆原秀一氏の言を借りれば「営業マンが見聞き実体験し〝これなら顧客の満足が得られる〟と判断した一般のホテル・旅館にも商圏が広がり」、また同様の角度からレストラン用サイトの開設に至った。現在、課金収入の対象となるホテル・旅館などの会員数は400万件。「単価上昇と厳しい在庫供給の間でのせめぎ合い状態」(漆原氏)とはいうものの、インバウンダー増という商機に身を置いていることも事実。
 さてそんな一休の株とどう対峙するか。「配当性向40%目標」(同)で目下3期連続の増配中。中小型成長株投資の物差しのPEGレシオ(時価予想PER÷今期予想を含む5期間のEPS平均成長率)は1以下。「成長力に株価が割り負けている」と教えている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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