【ニュースの深層】□□111〈太陽光発電設置 東京都、義務化検討へ〉 他県は既設住宅で成果上げる(2021年10月21日号)

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 脱炭素社会へ向けた動きが活発化する中、行政による再生可能エネルギーの取り組みが本格化してきた。21年10月、東京都の小池百合子知事が、新築住宅を対象に太陽光発電の設置義務化について検討すると発表。具体的な取り組みは検討中としており、企業や行政団体などとも協議して進めていくという。

 東京都が検討に入った太陽光発電の設置義務化では「一定の新築建築物」を対象にしている。具体的な内容はまだ決まっていないとした上で、「新築を対象にする理由には、東京都が掲げる2050年のミッションがある。50年頃になると、既存住宅よりもこれから建てられる新築住宅の割合が多くなる」(東京都)と説明している。
 先を見据えた施策と位置付ける一方、「義務化は、見方次第で受け取り方が異なる。そのため、専門家や行政団体の話を聞きながら、進めていく必要がある」(東京都)としている。
 新築だけでなく、既設住宅への支援についても、議論を進めていく方向で、今後に注目が集まる。


■他県は静観も既設で成果

 東京都の動きに対して、神奈川、埼玉、千葉などは、既設住宅向けの補助金制度を積極的に実施している。各自治体とも、補助金の予算を使い切るペースで、着々と再エネの普及させている。
 3県はいずれも東京都のように義務化に踏み切ることは現状ないとしつつも、再エネの普及には、今後も予算を投じていく姿勢だ。
 なかでも、神奈川県では、太陽光発電と蓄電池の購入希望者を募り、一括発注して低価格で販売する「共同購入事業」や、太陽光発電の初回設置費用がかからない「ゼロ円ソーラー」による取り組みが成果を上げている。
 共同購入事業は、他県でも導入が進んでいる状況で、大阪、京都、北海道、群馬、岩手などでも展開されている。神奈川県の共同購入事業は、現在2200人が登録。「プランも変えているため、昨年との比較はできないが、登録者自体は増えている傾向にある」(神奈川県)と話している。ゼロ円ソーラーも154件を設置している状況で、行政と企業が連携した取り組みが広がっている。


■義務化は慎重な声も

 太陽光発電の設置義務化に、慎重な見方を示す業界関係者もいる。
 太陽光発電や蓄電池の設置は災害対策として認知されつつあるが、設置するにはコストがかかる。義務化となれば、コストを負担に感じる消費者は意欲を削いでしまう可能性がある。また、義務化された地域を選ばず、他県への移住も検討する消費者も増えると予想され、人口の増減や、産業にも影響が出る可能性があると指摘する声もある。
 脱炭素社会に向けた取り組みはこれからも進んでいく方向だが、コストと技術革新も同時に進めていく必要がある。行政の動向に注視しながら、省エネ商材を製造販売する企業にも目を向けていく必要がありそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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