【ニュースの深層】 □□128<「景表法」確約手続きを導入へ> 社名公表するかは未確定(2022年12月8日・15日合併号)

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 消費者庁で開催されている景品表示法検討会では11月30日、報告書の骨子案を示した。骨子案には、改善計画を提出することで措置命令を回避できる「確約手続き」を導入する方向性が盛り込まれている。骨子案では、確約手続きについて、返金や計画を履行しなかった場合の対応についても言及している。ただ、具体的な制度設計が現時点で十分に明らかになっているわけではない。「確約手続き」を選択した事業者が、社名公表の対象とされる可能性もある。「確約手続き」の制度がどの程度実効性を確保できるかについても現時点では不透明だ。

■アマゾン、楽天トラベルで事例

 「確約手続き」は、独占禁止法に18年に導入された制度だ。独禁法では、違反行為があった事業者が、確約手続きを行うことを選択した場合、違反行為についての改善に向けた計画「確約計画」を策定し、公正取引委員会に提出する。
 改善計画が承認されれば、行政は措置命令を行わないという仕組みだ。独禁法では、確約手続きを選択した場合、事業者名が自動的に公表される。
 これまで独禁法の確約手続きは、楽天トラベルと、アマゾンジャパンの二つの事例で選択されている。
 アマゾンジャパンの事例では、アマゾンジャパンが18年に、仕入れ先(ベンダー)に対して、物流費の高騰などを理由に、「ベースコープ」と呼ばれる協力金を要請していたとされる事案について、公取委が立ち入り調査を行っていた。
 アマゾンジャパンはその後、公取委に対して、「ベンダーに対して、商品の販売で利益が得られないことなどを理由に、金額の合理的根拠を示さずに、金銭の提供をさせることを取りやめる」などといった内容を盛り込んだ「確約計画」を提出。公取委はこれを承認した。アマゾンジャパンはその後、ベンダーに対して、合計20億円にも及ぶ返金を行ったとされている。


■事業者名公表も不透明

 景表法検討会の骨子案では、確約手続きについて、「確約手続の対象、返金措置の位置付け、認定された確約計画の公表、確約計画が履行されなかった場合の対応等について、独占禁止法の『確約手続に関する対応方針』を参考にする」としている。
 実際に返金が必要となるのかや、確約手続きを選択した事業者名が公表されるのかといった、制度設計の詳細については、未だ不透明だ。
 確約手続きのメリットとしては、行政から指示を受けてから、事態の完結まで、早期に終了するという点がある。現在は、違法表示で措置命令を受けてから、課徴金の納付命令が下り、実際に納付するまで、2年以上の期間がかかるケースもあるという。
 景表法に詳しい、丸の内ソレイユ法律事務所の阿部栄一郎弁護士は、「検討会の議論では、確約手続きの場合、事態が終了するまでの期間が1年程度になるという意見もある。ただ、返金の措置が煩雑になる可能性もあり、実際にどれくらい選択されるかは、現時点では未知数だ」と話している。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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