【ニュースの深層】□□114〈太陽光発電普及にブレーキ〉 大量廃棄、半導体不足…課題多く (2022年2月10日号)

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 太陽光発電による再生可能エネルギー(再エネ)の普及にブレーキがかかっている。発電や売電ができるメリットが先行した時期が過ぎ、リサイクル、大量廃棄、地域住民との共生など、再エネ市場に対して課題が多く出てきたからだ。経済産業省や環境省は再エネ普及に向けた施策を推進するものの、課題解決までは道半ば。世界的な半導体不足の影響も、太陽光発電の品不足を深刻化させている。戸建て住宅向けの工事が遅れるだけでなく、産業用太陽光発電の工事も未着工で、関連する事業者の今後の経営も懸念されているのが現状だ。再エネの普及には何が必要なのか、改めて整理する。

■進まないリサイクル

 脱炭素社会を目指すため、再エネ分野への投資が積極的に行われている一方で、再エネの軸となる太陽光発電では、異常気象によって太陽光パネルの大量廃棄が発生。簡単ではないパネルのリサイクルや後処理についての問題も浮上している。
 こうした問題に対して、経産省や環境省を中心に施策が進む。
 環境省では、「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を策定し、経産省もこれを進めている。
 事業者側も、太陽光発電をリサイクルできる会社や、リサイクルできる設備機器を開発して販売する会社が増えている。
 また、10キロワット以上の太陽光発電設備を導入した場合、22年7月1日から始まる再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)の改正によって、太陽光パネルにおける廃棄費用の外部積立が義務化される。
 これらの現状を踏まえれば、リサイクルの仕組みは整ってきたといえるが、リサイクルには高いコストがかかると指摘されている。太陽光パネルの部材でも再び使えるものと使えないものがあるため、製品開発時点からの見直しが必要であるとの意見もあがる。


■住民への説明が重要

 太陽光発電は、戸建て向けの設置だけなく、法人施設などでも導入が広がりつつある。この中でも土地活用における太陽光発電設備の導入には地域の理解が必要になる。
 環境省は、21年5月26日、地球温暖化対策推進法の一部改正法案をまとめた。22年4月頃に施行される予定。改正案の中には「地方創生につながる再エネ導入を促進」が盛り込まれ、事業者と地域が合意するための内容などになっている。
 近年は、土地活用のための太陽光発電導入に反対する地域が多数ある。このため、改正法案で地方自治体や地域住民、事業者のそれぞれが一体となって再エネへの理解を深めていきたい方向だ。
 太陽光発電を販売する事業者の中には、土地活用のような産業用太陽光発電を主力事業にしている会社は多く、この動きには注目が集まっている。
 再エネの普及に向けては、官民一体となって再エネの重要性をさらに訴求していく必要がある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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