【ニュースの深層】□□94〈消費者庁、高島屋に景表法違反で措置命令〉/サイト表示への意識向上が急務に

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 消費者庁は6月13日、高島屋に対してECサイトで販売する化粧品、美容雑貨などで原産国の不当表示があったとして、景品表示法に基づき措置命令を行った。高島屋は「実店舗で登録している商品情報が更新されておらず、誤った情報のままECサイトに掲載していた」(広報・IR部)と説明する。小売業のEC化が進む中、行政やECモールの表示に対する監視体制は厳格化している。EC事業者は仕入れ先の情報をうのみにせず、表示の正確性への意識を高める必要がある。

 高島屋のECサイトで販売していた有名ブランドの化粧品や美容雑貨など147点において原産国を誤って表記していた。景表法違反において1社当たりで過去最高の対象点数。消費者庁は課徴金の対象にはならないとしている。
 昨年10月、購入者から高島屋に「原産国が違う」との連絡が入り発覚した。韓国産をフランス産、フランス産をアメリカ産などと掲載。表示期間は商品ごとに異なるが、最長で11年8月17日から19年4月3日だった。対象商品の該当期間の売上高は1517万5000円だったという。


■情報共有に不備

 高島屋によると化粧品は大半の商品を横浜店から出荷しており、商品情報は横浜店のスタッフの登録情報をもとにECサイトに掲載していた。
 「実店舗のスタッフは卸会社など取引先から情報提供を受け、商品情報を作成していた。しかし、情報共有体制に不備があり、原産国が変わっていたアイテムの情報などが反映されていなかった。今後は従業員教育を徹底するとともに、情報共有や相互確認の体制をしっかりと整備する」(同)と話す。
 仕入れ先である卸会社から原産国が変更になった情報が共有されておらず、高島屋の店舗スタッフもそのことに気付かなかったという。
 実店舗では原産国の表示義務がないため、仕入れ先も店舗スタッフもチェック体制が甘くなったのかもしれない。
 消費者庁は今回の事例に基づき、リアル店舗をメインとする小売事業者のECサイトにおける表示を厳格に監視していく可能性がある。「EC化を急ぐあまりに仕方なく」といった言い訳が通用するはずもない。


■モールも監視強化

 楽天は今年1月、一般財団法人ボーケン品質評価機構(ボーケン、本部大阪府、堀場勇人理事長)とECモール「楽天市場」の品質管理において連携を強化すると発表した。消費者の声などをもとに、アパレルなどの原材料の不当表示を確認するだけでなく、試売して品質確認まで行うという。
 楽天の担当者は、「不適正表示には、意図的に表示を変えているケースだけでなく、仕入れ先にだまされているケースや、表示方法を正しく理解できていないケースもある。正しく指導を行うことで店舗の意識も高まる」と説明していた。
 出店者に不適正表示があると、顧客から「楽天市場」に対する信頼を失ってしまう可能性がある。ボーケンと連携することで監視体制を強化するとともに、セミナーなどを通して出店者を啓発している。
 EC市場拡大とともに販売者が増えることで、不適正な商品表示も増えてしまっているかもしれない。小売大手はチェック体制を築ききれていなくてもEC化を止めることはできず、中小企業はそもそもチェック体制を築く余裕がなかったりする。
 EC市場への消費者の信頼性を高めるためにも、正しい商品情報を徹底することは最低限の義務だ。大手も中小も余裕がない中で、どのようにチェック体制を構築するかを早急に検討すべきだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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