【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】連載第17回 消費増税と超管理社会

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■中国での決済

 前回に続いて、もう少しデジタルマーケティングの話を続けていこう。
 ヒト・モノ・カネが生み出す情報量が爆発的に増え、経済活動に大きな影響を及ぼし始めている。膨大な情報を収集して経済活動に利用する方法として、デジタルエコノミーなる言葉が登場。私たちの生活も大きな変化を迫られている。
 10月、後輩が上海に出張に行った。帰国報告会での最初の発言が「タクシーをほとんど利用できなかった」であった。
 中国に住んでいる同僚や取引会社の人と一緒に移動しているときは何も感じなかったが、1人で昼食に行くときや、ちょっとした買い物のときにタクシーが利用できないことに気付き、途方に暮れたそうだ。
 上海でタクシーを利用しようと思ったら、現地の銀行口座の決済と連動させた配車アプリ「滴滴」を使用すればタクシーが来てくれ、料金の支払いもスマホでOK。
 この配車アプリが普及したため、上海の街では流しのタクシーが激減しているとのこと。出張中や旅行中の外国人はアプリが取得できないため、クレジットや現金で支払えるタクシーを求めて右往左往していたそうである。
 中国ではほとんどの社会人が身分証、携帯電話、銀行口座とひも付いた決済アプリを使っている。日常消費から資産運用まで、スマホ1台で済む新たな生活インフラが急成長中であり、デジタルエコノミーという概念が生まれている。


■独は「ベリミ」

 このデジタルエコノミーが広がる一方、個人生活を管理する技術も向上している。このシステムを利用するためには、さまざまな個人情報の提供が必須であり、この情報を当局は監視システムや評価システムに連動させている。政府主義の超管理社会の幕開けとなりつつある。
 超管理社会に対抗すべく、2018年4月には、ドイツで「ベリミ」というデータ連携サービスが始まった。出資するのはドイツを代表する銀行や自動車会社、航空会社大手など10社である。互いのデータを持ち寄り、消費者の行動を広範囲に分析して顧客の囲い込みにつなげる。
 超管理社会に対抗しているといわれるのは、参加企業が集めたデータの使い方をユーザーに委ねている点だ。ユーザーが同意しない限り、データは広告や外部企業に勝手に使われることはない。個人を尊重し、顧客とのリテンションを重ね、顧客主体の管理を指向している。
 わが国でも来年の消費税増税時に、増税分をポイントで還元する施策の創設を検討し、景気の冷え込みを防ぐ対策を立てている。
 中小の小売店で商品を購入した顧客に、税金を原資として販売価格の2%分のポイントを付けるというもので、ポイントは商店やネット販売の代金支払いや値引きに使える。
 しかし、対象になるのはクレジットカードや電子マネーで購入した場合だけで、現金払いだとポイント還元の恩恵は受けられない。この施策は景気対策のほかにも、現金決済が主流のわが国にデジタルエコノミーの扉を開け、消費者の購買行動を収集しようとする副次的な目的も垣間見られる。
 来年はわが国でも「デジタルエコノミー、超管理社会」が始まるような気がする。(月1回掲載)


〈プロフィール〉
伊藤 博永(いとう・ひろなが)
 1993年3月、旭通信社(現ADK)入社。2001年4月、価値総研取締役、09年4月、ADKダイアログ代表取締役、12年1月、アディック取締役(現任)、15年9月、日本リテンション・マーケティング協会理事、18年4月、日本リテンション・マーケティング協会監事(現任)。
 筆者に関する問い合わせは、一般社団法人日本リテンション・マーケティング協会事務局((電)=03―6434―0703)まで。http://j-rma.jp/

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。


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