【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】連載第20回 環境に応じた戦略の一つ

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■新興が苦戦

 もう二昔前の話であるが「通販ビジネス」に関する本を書いたことがある。通販の黎明期から発展期にかけて広告会社で通販企業を担当していたため、事業開始から定着・拡大まで、さまざまな問題に対処しなければならなかった。そんな中で培ってきた知識とノウハウを一冊にまとめた。
 内容に興味を持ってくれた企業が、わが社の扉を叩いて取引が始まることを期待しての本であったため、具体的で詳細な内容をあえて記載しなかったことが今となれば残念である。
 当時の通販企業は差別化のできる商品を開発し、宣伝の方向性テストを繰り返し、円滑に運営できれば、事業立ち上げから5年程度で10億円規模の売り上げを達成できた。
 稼いだ利益を投資に回し続けていけば、倍々ゲームで成長していった。新聞折り込みチラシ、新聞広告、テレビ広告での新規顧客獲得コストも1万円以下のケースが続いていた時代であった。
 21世紀に入ると多くの会社が通販のノウハウを学び、老舗企業も新興企業も同じ土俵の上で戦わざるを得なくなった。
 老舗は今までの既存顧客とのリテンションが機能し、継続して購入してくれていたため、販売高の急激な落ち込みは避けられていた。だが、新興企業にとっては「新規顧客が簡単に取れない、既存顧客はまだ少ない」と二重苦に悩まされるようになってきた。
 老舗企業が既存顧客という資産で頑張る一方、新興企業は新規顧客を取れなくて苦戦している。そんなときふと気付いたことがある。ノウハウの普及だけでなく、人口減少もボトルネックになっているのではないか?

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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