【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】連載第13回 「製品特性」が最も重要

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■LとRで異なる

 今年に入ってから、ロイヤルティという言葉をよく耳にする。この言葉を聞くと、昔先輩に言われたことを思い出したり、最近気付いた面白いことを頭に浮かべたりする。
 先輩からは、「片仮名表記では同じロイヤルティだが、英語ではLとRのロイヤルティがあり、明確な違いがあるのを知っているか」と言われた。
 もちろん、初耳だったし、英語は堪能ではなかったので当然知らなかった。Lのロイヤルティは「忠実・忠誠心が基本」で、ブランドロイヤルティなどとして使っている。
 一方、Rのロイヤルティは「権利料が基本」で、作家の著作権料、商標権料、特許権料などの知的財産権の使用料として使っているのだと教えられた。頭の中では混乱していたが、それまでは文脈の中で無意識に使い分けていたようだ。
 最近気付いたもう一つの発見はLの話である。一般に学者、研究者を中心とした学術分野ではロイヤルティと表現され、広告やマーケティング分野の実務者の間ではロイヤリティと表現されていることである。
 今まで、ルとリの区別を違和感なく読んでいて、会社の企画書ではロイヤリティと表記し、雑誌等への寄稿ではロイヤルティと書き、何となく区別していた気がする。今回はロイヤルティで統一していくことにする。


■必要な3要素

 さて、ロイヤルティの言葉としての話はここまでとして、その構築方法について日々考えていることに話を進めよう。コミュニケーションの分野では、ロイヤルティはブランドロイヤルティが代表しているので、ブランドロイヤルティとして話を進めていく。
 ブランドロイヤルティは、そもそも顧客が代替となるブランドが他にもあるにもかかわらず、ある特定のブランドを一定期間買い続ける心理をいう。
 ブランドロイヤルティを形成するためには「製品特性+販売店(店員、店舗)+顧客間の評価」の三つの要素が必要とされる。この三つの要素が複合的に重なり、顧客の中に信頼を根付かせることがブランドロイヤルティの構築である。
 中でも最も重要な要素が、「使って良かった」と顧客に思わせる「製品特性」である。「製品特性」が悪ければ、ブランドロイヤルティ形式のスタートラインに立てない。
 その他の要素については、販売店=「店舗外観や接客態度」に、顧客間の評価=「広告宣伝や口コミ」に左右されるため、それぞれ投下する費用によって形成度合いは変化してくる。
 この3要素と顧客の関係は、つながる場面があるということである。企業は売り上げ拡大のためにつながる場面を提供せざるを得ないし、つながったら顧客との信頼関係を向上させねばならない。つながる場面の対応がリテンションであり、効果効率的な運用をすることがマーケティングである。
    ◇
 今年2月まで本紙で連載して好評だった【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】を再開します。月1回の連載となります。


〈プロフィール〉
伊藤 博永(いとう・ひろなが)
 1993年3月、旭通信社(現ADK)入社。2001年4月、価値総研取締役、09年4月、ADKダイアログ代表取締役、12年1月、アディック取締役(現任)、15年9月、日本リテンション・マーケティング協会理事、18年4月、日本リテンション・マーケティング協会監事(現任)。
 筆者に関する問い合わせは、一般社団法人日本リテンション・マーケティング協会事務局((電)=03—6434—0703)まで。http://j−rma.jp/

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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