2022年 有力EC事業者・有識者が市場を予測

LTVの意味を見直す時代に

クリームチームマーケティング

代表 山口尚大 氏 LTVの意味を見直す時代に

消費者庁では、21年以降なるべく早い段階で、特定商取引法のガイドラインを改正し、「価格や契約条件の”一体表示”の義務化(※参照)を盛り込む方針を示している。化粧品や健康食品のECのコンサルティングを行うクリームチームマーケティング(本社東京都)の山口尚大代表は、この方針について、「短期的な視点で広告費を回収するビジネスは終わり、本当の意味のLTVを見直す時代になる」と話す。

 ”一体表示”の義務化については、まっとうな法改正になると考えている。これまで、化粧品や健康食品などの定期購入で、早期に広告費を回収するために、わざと解約しにくくするような表示をしているECサイトが多かった。例えば、定価4000円の健康食品のランディングページで、「初回100円」と表示し、3回縛り(3回購入を義務付ける)の契約をさせ、2回目以降は定価で販売するようなビジネスモデルだ。
 悪質とは言わないまでも、広告費を回収することだけを考え、消費者の幸せを考えていない企業も少なくない。当社のクライアントには、そのような企業はいないが、かつてはそのような案件を見たこともある。
 現在は、化粧品や健康食品の定期購入型のECに、「サブスクリプション」「D2C」「単品リピート通販」など、さまざまな呼び方がある。一括りにされることもあるが、全て意味あいが全く違うということを、事業者には意識してもらいたい。悪質な表示をして、淘汰される企業が多い一方で、新規参入する企業が多いジャンルでもある。法改正がある・ないにかかわらず、お客さまに選ばれる商品サービスを提供するブランドにならなければ、事業者は残っていけない時代になったと改めて感じる。
 商品がいいことはもはや当たり前。その上で、お客さまのことを考え、いつでも解約できるような環境を整備することにより、結果的に、お客さまが定期購入を継続したり、定期に戻ってきたりするようなブランドにしていく必要がある。
 例えば現在は、「商品の発送準備に入る前に解約の連絡をする」ことを、解約の条件としている企業が多い。それを、「発送準備に入ったあとでも、いつでも解約できる」と表示することも、消費者のことを考えた条件だと言える。
 群雄割拠する定期型通販の業界では、独自の世界観を持つことが、生き残ってお客さまに選ばれるための一番のカギとなる。定期で商品を提供する仕組みだけでなく、お客さまの求めている情報の発信や、ライフスタイルの提案をしていくことが重要だ。
 一つの商品やサービスに依存するビジネスも危険だ。複数の商品やサービスを展開し、それぞれの商品・サービスを、お客さまと一緒に成長させていくことが、業界で成功する要素になると考えている。
 短期で広告費を回収できるという理由だけで定期モデルを導入するうまみは、すでになくなっている。法改正の影響を受けないためにも、オリジナルのブランドを構築していくことが重要だ。


 ※価格や契約条件の”一体表示”の義務化とは…特定商取引法および預託法の制度の在り方に関する検討委員会が、20年8月にまとめた報告書に盛り込まれた方針。特商法のガイドラインの見直しの際に、「広告画面及び申込画面において、価格等と契約内容・解約条件を一体として容易に認識できないような表示を禁止すべき」という方向性を示している。


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