【中国越境ECの”今と現実”】第14回 「天猫国際」出店のみが選択肢

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専用通関を使えるモール

 今回からは、実際に中国越境ECに取り組むためには、具体的にどのような方法があり、それぞれの特徴やメリット・デメリットに関してお伝えしたいと思います。
 まず、中国越境ECに参入する方法は、大きく二つに分けられます。一つは自社ショップ(モール出店)を運営する方法。もう一つは、すでに出店しているサイト(企業)に対して商品の卸販売を行う方法です。
 実際には、越境ECにおいて最大のボリュームを持つ流通ルートは、既存流通ルート(小売、卸)経由による中国での販売になります。この場合、正確な販売状況の把握やコントロールが自社でできないため、今回は割愛します。
 まずは、正規の越境ECプラットフォームに自社ショップを開く方法を紹介します。日本ですと、自社サイトを立ち上げるかショッピングモールに出店するか、その両方かという選択肢になると思います。ただ、中国越境ECにおいては、モール出店以外の選択肢は考えにくいという事情があります。
 それは、以前お伝えした「越境EC通関」というメリットの多い物流形式を使うことができるのが、大手越境ECモールのみであるという点からです。もう少し正確に言えば、独自に越境ECサイトを立ち上げることは可能なのですが、「越境EC通関」による物流を使うためには、中国税関と接続をしたシステムが必要になります。
 そのため、単にサイトを立ち上げればOKではなく、システム的な投資や人的コネクションが必要になります。通常の企業(中国で現地法人を使った大規模な事業を展開していない企業)では、そのようなシステムを作り上げるのは現実的ではないため、選択肢からは外れることとなります。


■天猫出店以外は厳しい

 大手越境ECモールに出店をする場合、「どのモールに出店するのか」がポイントとなります。
 中でも、日本・中国ともに知名度が高いモールが「天猫国際(Tモールグローバル)」です。天猫国際と並んで、越境ECプラットフォームとして主要な出店先候補となっていたのが、JD(京東)の越境ECプラットフォーム「京東全球購(JD Woldwide)」です。19年からサイト名が「海囤全球(ハイトンワールドワイド)」に変更になりましたが、ブランディングがうまくいかず流通額に関しても苦しんでいる状況です。現在、「海囤全球」を選択肢として選ぶ日本企業は少なくなっています。
 出店形式では、「天猫国際」ほど出店メリットがあるプラットフォームはないのが現状です。
 その「天猫国際」ですが、出店にはかなり高いハードルがあります。日本での圧倒的な知名度を持つ企業(小売・メーカー)や、もしくは、中国でかなりの流通実績がある商品のメーカーでないと、出店審査が下りない状況です。
 それ以外の企業においては、「天猫国際」出店という出店形式の越境EC進出は厳しいと言わざるを得ません。もちろん、天猫国際以外のプラットフォームへの出店という選択肢はなくはないのですが、売り上げを上げるためには、サイトの構築だけではなく日々の運営が重要になります。   (つづく)

〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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