【中国越境ECの”今と現実”】第11回 関税が整備される越境EC物流

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効率よく関税をかける

 中国政府は、増え続ける越境ECによる個人輸入と、既存の一般貿易による輸入との不公平をなくすための施策として、2014年より越境EC制度をスタートさせ、現在に至るまでにさまざまな法改正、および追加施策を施行してきました。
 越境EC制度ができる前は、EMSやクーリエと呼ばれる、FedEx、DHL、SFなどの国際的な配送会社が物流を占有していました。中でもEMSは航空便、SAL便、船便と配達日数と料金のバランスを選択できる、最もメジャーな配送方法でした。
 中国における国際EMSによる配送(輸入)は、経済発展とともに爆発的に増えましたが、それとともに関税未徴収が問題となりました。そのため、越境EC制度を整えることにより、越境EC商品に関して、数量や金額の把握、それに伴う関税徴収を効率よく行える物流の仕組みが構築されました。
 現在では、(1)自由貿易区と呼ばれる、指定地域内に作られた越境EC用の保税倉庫からの出荷(2)越境EC通関による直接配送─の二つの方法がメインの越境EC物流となっております。この二つの方法は、どちらも越境EC通関です。専用保税倉庫の在庫から取り崩した商品なのか、海外から送られてきた商品なのかの違いだけです。


大手モールは税関と連携

 越境EC通関において必要な情報は、「商品情報」「顧客情報」「配送情報」の三つです。これらの情報を、中国税関がシステムで管理しています(三単合一と言われます)。
 大手ECサイトや大手ECモールなどのプラットフォーム事業者であれば、最初から税関とつながったシステムを構築していますので、特にECモールにおいて、出店者は越境EC通関の仕組みを意識することなく商品出荷が可能となります。
 大手のECプラットフォーム事業者は、ユーザーの登録時に、中国の身分証明書である中華人民共和国居民身分証を登録させています。また、商品登録時には、税関用に提出する内容(成分表や原産地証明書等)が必須となり、事前に税関に申請されています。配送に関しては、プラットフォーム事業者と提携している業者経由の配送を指定しているケースが多いです。そのため、購入者情報と商品・配送情報が同時に税関に申請されます。
 越境ECにおける関税は、16年4月に施行された越境EC制度の新政策に基づいて運用されています。中国における増値税(日本でいう消費税)は現在16%となっており、輸入品に関しては輸入増値税という名称で加算されております。
 現在、越境ECにおける優遇制度として輸入増値税の30%OFFが続いており、16%×0・7=11・2%が輸入増値税となります(化粧品はプラス消費税と呼ばれる税金15%が付加されます)。
 ここだけ聞くと、越境ECにおける税制優遇が大変魅力的に感じますが、一般貿易の場合、輸入時は仕入れ段階の商品原価に対して輸入増値税+関税(+商品により消費税等)になりますので、利益率の高い商品や関税率の低い商品などは、越境ECによるメリットが薄れる場合もあります。一般貿易でも通関がしやすい商品の場合、総合的に判断をして、中国でのEC販売を行うことをお勧めします。(つづく)


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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