【中国越境ECの”今と現実”】第10回 18年W11は各モールが大幅成長

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■ポイントは国外展開と新小売

 今回は、先日11月11日に行われた中国最大のネットショッピングイベント「双11(ダブルイレブン)」に関してお伝えします。中国最大のECショッピングモール「天猫(Tモール)」における1日の取扱高は2135億元(約3兆5000億円)を記録し、昨年の1682億元(約2兆7600億円)から約27%の大幅アップをしました。また、配送件数も初めて10億個を超え、世界を驚かせました。
 日本企業としては、ユニクロが今年も大きく成長をしており、天猫内で「億元倶楽部」と呼ばれる売り上げ1億元以上のサイトに入っております。特にユニクロにおいては、開始35秒で1億元の売り上げを突破、大きなニュースとなりました。
 越境ECにおいても日本勢は大変強く、Tモールグローバルでの商品国別売り上げでは、1位日本、2位米国、3位韓国、4位オーストラリア、5位ドイツとなり、昨年に続いて国別でトップとなりました。各店においても、売り上げトップ5の内3店舗を日本企業が占めました。2位に花王、3位にはMOONY(ユニ・チャーム)、5位にはドクター・シーラボが、それぞれランクインしました。
 今回のダブルイレブンのポイントは二つ。一つは海外への販売が伸びたこと、もう一つはニューリテールが注目されたことです。
 一つ目の海外への販売において、販売先国別ランクでは、1位香港、2位米国、3位台湾、4位オーストラリア、5位ロシアとなりました。1位の香港と3位の台湾はロケーション的に妥当ですが、2位に米国が来ています。これは現在、米中貿易戦争の真最中で、米国側も中国からの輸入商品に対して報復関税を課している最中だけに面白いところです。
 二つ目のニューリテールに関してです。中国では今、デジタルデータを駆使し、オフラインとオンラインを合わせた「ニューリテール」という、新しい小売流通形態がすさまじい勢いで進んでいます。今回のW11においても、ニューリテールの流れとして、リアル側ではデリバリーサービスの「ウーラマ」やグルメサイトの「コウベイ」、スーパーマーケット「フーマ」などが連携してダブルイレブンを盛り上げました。フーマでは開店2時間で前年同日売り上げを突破し、コウベイでも同日の利用者数は大幅に伸び通常よりも3倍になりました。ウーラマにおいてもオーダーは114%アップとなりました。


■軒並み過去最高売上を更新

 ダブルイレブンでは、アリババグループ以外のECモールでも同じようにダブルイレブンのキャンペーンを行っております。日本でいうと、楽天スーパーセールに乗っかって、他のモールも、「スーパーセール」という名称でキャンペーンを行う様なものです。そのためこの時期になると、中国のスマートフォンの全てのECアプリのアイコンに、「1111」と表示されるという面白い現象が起こります。
 中国第2位のJD(京東)でも、キャンペーン売り上げが1598億元(約2兆6200億円)に達しました。その他、中国最大の家電量販店蘇寧のECサイトが148億元(約2442億円)、今中国で最も成長率の高いECサイト(アプリ)であるPDDが94億元(約1542億円)と、大手ECサイトは軒並み過去最高売上を達成しております。こういった、業界全体で大きなイベントを作り、盛り上げていくところは中国ならではといったところです。


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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