【中国越境ECの”今と現実”】第9回 都市部で一般化する越境EC

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■80年代生まれが56%
 今回は、実際に越境ECを利用しているのが、どういった層のユーザーなのかについて考えてみましょう。
 直近の統計によると、中国の越境ECユーザーのボリューム層は、「29〜39歳」です。56.3%と、全体の半分以上を占めています。いわゆる80年代生まれの世代です。続いて、90年代生まれの世代が25.8%。70年代以前に生まれた層は18.8%で、主力層ではありません。
 職業別にみると「一般の会社員」が最も多く、管理職や一般社員をすべて合わせると、全体の約40%を占めています。この結果をみると、中国においては、越境ECが、一部の富裕層や上流階級の人々だけのものではなく、一般的に利用されていることが分かります。社会に出て、ある程度収入が確立されたユーザーが多いということもうかがえます。

■都市部に利用者が集中
 ユーザーの地域分布をみると、利用者が多い地域のトップ3は北京、上海、広東省です。その他、上位に挙がっている地域としては、沿岸部地域と華東・華南地域が多くなっています。ユーザーの多い地域は中国における経済発展地域と一致します。経済が発展し、かつ海外の文化が入りやすい沿岸部の大都市のユーザーほど、越境ECを利用する率が高いということが分かります。
 越境ECでの購入頻度においては、「平均して月1回程度の購入」が一番多く、次に「平均週1回」「平均月2回」「平均2〜3カ月に1回」となっています。越境ECを利用するユーザーには、リピーターが多いということも分かっています。
 利用頻度には世代間の差異もあります。「95年世代」と呼ばれる95〜2000年生まれのユーザーでは、一番多いのが「平均月2回の購入」、「90〜94年世代(90年世代)」や「80年世代」では、「平均月1回の購入」が多くなっています。

■本物を求める志向
 越境ECの利用者は、若いほど購入回数が多い傾向があります。商材にもよりますが、越境ECユーザーに対しては、リピート施策が重要であるといえます。
 このように、中国越境ECマーケットは、すっかり定着した感がありますが、ユーザーが購入に際して一番重要視しているポイントは、「正規品であること」となっています。次に「価格」。そして「ECサイト(プラットフォーム)の知名度、信用度」となっています。
 以前は商品配送のコストや送料などが上位に挙がっていました。ただ、昨今の越境EC制度の改変、特に保税倉庫方式が一般化されたことに伴い、ユーザー側の捉え方も徐々に変わってきています。「越境ECサイト」でも、「ニセモノではなく本物の商品が欲しい」という意識が明確に表れるようになっています。中国沿岸部を中心に経済が発展し、人々が豊かになったということ、まだニセモノが出回っているということの、二つの要因を表しているといえます。


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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