【中国越境ECの”今と現実”】第4回 中国越境EC市場規模は約2兆円に

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■増える平均所得と旅行者

 今回は、中国越境EC市場について解説します。市場規模は年々拡大しており、17年の中国越境ECの市場規模は1113億4000万元(約1兆8928億円)となりました。16年は744億2000万元(約1兆2651億円)でしたから、1年で約50%の成長を遂げた計算になります。ちなみに、経済産業省の16年の推計では、日本から中国への越境EC市場規模は、1兆366億円とされています。
 このように、中国越境EC市場が年々拡大し続けられている要因としては、大きく分けて、(1)社会的背景の変化(2)越境EC制度の確立─の二つが挙げられます。
 (1)の”社会的背景の変化”としては、「中国国民の平均収入の増加に伴う消費支出の増加」や前回までにお伝えした「中国EC市場の拡大」「海外旅行者や海外留学生の増加」などがあると思います。
 また、(2)の”越境EC制度の確立”については、14年ごろからスタートした「自由貿易区による越境EC施策のテスト運用」や、16年4月8日の「新越境EC制度の施行」を経て、現行の制度に落ち着いたという印象を持っています。
 それぞれの要因をもう少し詳しく見ていきましょう。
 17年の中国国民の可処分所得は約2万6000元(約44万2000円)で、前年比で9.2%増(物価の変動を考慮した実際の増加でも7.3%増)となっております。トップは上海で、北京とともに6万元(約102万円)にまで高まっております。こうした所得の増加が、越境ECのニーズにもつながっています。粗悪な偽物が多い国内製品を買うよりも、値段が高くても良いものが買える越境ECで商品を買いたいというニーズが生まれているのです。
 17年の中国EC市場の規模は6兆1000憶元(約103兆7000億円)で、前年比29.6%増という大変高い成長率を維持しております。EC化率が約20%ということを考えても、外国の商品を直接ネットで買うことができるという土壌があるのです。


■お土産とECの売れ筋が関係

 海外旅行をする中国人の数も年々増えています。17年は前年比6.5%増の1億3050万人が海外へ出国しました。訪日中国人観光客にも見られる傾向ですが、海外旅行で購入する商品と越境ECで売れている商品には一定の相関関係があります。特に中国では「口コミによる商品情報の拡散↓ブーム」が起こりやすいのです。
 SNS(ウィーチャットなど)を基盤としたコミュニティが発展しており、海外の情報(商品を含む)がリアルタイムに伝わってきます。
 海外の旅行先で知った商品を購入する際に、越境EC経由で購入するという流れが起こります。特に中国では、一般貿易による商品の輸入のハードルが他の国と比べて高く(輸入許可・検閲、関税)、国内で販売される海外の商品は他の先進国に比べると、品目や種類が少ないのが実情です。
 そのため、越境ECでしか売っていない海外商品が多く存在し、越境ECで購入するニーズが高いのです。
 また、海外旅行に比べると規模が小さいものの、海外への留学生数も17年は前年比11.6%増の60万8000人と増えています。留学を終えて帰国する人は年々約10%ずつ増加を続けているのです。海外での生活を経験した人の数が増加していることも、中国の越境EC市場が拡大を続けている要因の一つといえるかもしれません。


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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