【中国越境ECの”今と現実”】第7回 群雄割拠の越境EC市場

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■4番手の唯品国際

 前回は、中国越境ECにおける三大プレイヤーである、アリババの天猫国際(Tモールグローバル)、京東全球購(JD Worldwide)、考拉(Kaola、コアラ)の3サイトをご紹介しました。ただ、中国にはこの3サイト以外にも多くの越境ECサイトがあります。
 17年第2四半期における中国越境ECプレイヤーの市場の占有率は、天猫国際(Tモールグローバル)が22・3%、京東全球購(JD Worldwide)が18・0%、考拉(Kaola、コアラ)17・5%となっております。その3サイトに続くサイトとして、唯品国際(VIP)が8・8%、亜馬遜海外購(Amazon)が7・5%、小紅書(RED)5・4%、聚美扱速免税店4・4%、蘇寧海外購2・0%、豊趣海淘1・0%、達令0・8%があります。
 唯品会(VIP)は、美容系商品のフラッシュマーケティングで成長したサイトです。現在ではアパレル、靴、バッグやアクセサリーなど、ファッション系ECサイトとして大きく成長。中国第3位のECプラットフォームとなっています。
 17年末には、アジア最大のゲーム配信企業のテンセントと京東(JD)が、唯品会(VIP)に、合計で約8・63億ドル(約950憶円)を出資。現在はテンセントのグループ企業となっております。中国で人気のある美容系商品には海外ブランドの商品が多いため、越境ECによる海外商品販売でも人気があります。日本にも支社や巨大専用倉庫を持つなど、日中の越境物流に関しても力を入れており、商品買い付けにも積極的です。


■配送に強いAmazon

 亜馬遜海外購(Amazon)は、米国アマゾンが直接展開する越境ECサイトです。もともとアマゾンは、04年に中国現地EC企業の卓越を買収し、中国に進出。中国の国内ECサイトを運営しています。ただ、米アマゾンは、中国国内ECの競争の激化と中国特有の流通の仕組みのため、日本をはじめとする他の進出国でのシェア拡大とは異なり、苦戦しております。
 中国越境EC黎明期のころから、アメリカの商品を直接購入できるamazon.comは知名度も高く利用者も多くいました。もちろん、全て英語によるサービスのため、一部の上位富裕層が利用するサイトでした。そのamazon.comが中国向け越境EC購入に対応をしたのが、亜馬遜海外購になります。単なる言語対応だけではなく、中国国内に巨大保税倉庫を自前で構築し在庫を積み、中国全土に3日以内の配送をするサービスを実現しています。


■美容系に強いRED

 小紅書は日本ではRED(レッド)として知られているサイト(アプリ)です。美容系のソーシャルサービスで多くのユーザーを集め現在では7000万人以上のユーザーを有しています。他サイトに比べて、ユーザーに情報感度の高い若年層が多く、全ユーザーの80%を90年代生まれが占めている点に特徴があります。現在では、世界最大級のソーシャルコマースプラットフォームに成長しました。15年からEコマースを開始。日本商品も大変人気があり、小紅書における越境商品の売上個数のランキングでは、日本商品が頻繁に首位を獲得しています。(つづく)


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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