【中国越境ECの”今と現実”】第19回 京東がオムニチャネル化進めたW11

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■京東が店舗連携をアピール

 19年の中国「独身の日(W11)」について、引き続き解説します。
 19年のW11における京東の期間売り上げは、先述の通り2044億元という大きな金額で着地しました。その要因の一つとして大きく取り上げられているのが、オムニチャネルによるプロモーションです。ネットだけでなく、リアル店舗も活用し、オムニチャネルのプロモーションを行ったことが、売り上げ拡大に貢献したというケースが目立ちました。
 特に、リアルチャネルとして、1万2000店以上の京東家電店や、200店以上のパソコン専門店を活用したことが注目を浴びました。
 京東家電店は、京東のいわばFC店舗です。
 アリババが進める「ニューリテール戦略」の地域拠点である天猫小店と同様に、京東も京東小店を展開しています。その家電版と考えると分かりやすいです。それらの店舗を絡めたプロモーションも効果を出したというわけです。
 京東の直営店舗として、今回の「W11」に合わせて、11月11日午前0時に、地方都市の重慶に、京東の大型旗艦店である「京東電器超級体験店」をオープンさせました。建物は延べ床面積5万平方メートルという大型店で、開店の深夜0時から多くの消費者が訪れました。0時から3時までの間に、1万人以上の消費者がアクティビティーや体験に参加しました。
 京東ネットスーパーの売り上げは、前年比1・9倍という大きな伸びを記録したことが報告されています。京東得意の3C家電以外の生活商品に関しても、リアルとネットの融合が根付いてきていることが証明されたのです。
 京東ネットスーパーのラストワンマイル戦略を担う存在として、いわゆるクイックデリバリーを担当するグループ会社のダダ(達達)があります。ダダは、スマートロジスティクスというクイックデリバリーに特化したシステムを武器に、W11期間中の平均配送効率を前年比で36・4%高めたことが報告されています。


■京東側の実店舗が成長

 そのほかのテンセント・京東陣営の会社では、例えば、京東の主要株主であるスーパーのウォールマートが前年比1・7倍、永輝(えいき)が同3・5倍、華潤万家(かじゅんばんか)が同7倍、7FRESH(セブンフレッシュ)が同3・5倍と大きく売り上げを伸ばしました。
 薬局の一心堂葯房(いっしんどうやくぼう)は同5・4倍、国大葯房(こくだいやくぼう)は同4・9倍と、それぞれ売り上げが拡大しました。W11を単なるネットのイベントではなく小売流通のイベントにまで成長させた点は、京東の大変大きな功績であると言えます。
 京東の第一位株主は、中国大手IT企業のテンセントです。テンセントのニューリテール戦略の一翼を、京東や京東の関連会社、ウォールマートなどが担っているのです。


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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