【EC売り方研究所】〈動画広告の活用〉/企画やネット広告と連携必要

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広告会社の提案が増えつつある「ユーチューブ」のトップページ

広告会社の提案が増えつつある「ユーチューブ」のトップページ

 サイト利用者が互いに動画を投稿・閲覧しあえる動画共有サイトで、企業による動画広告が普及しつつある。動画広告は動画の視聴前に放映する広告スペースを利用して、契約した動画を流すものなどがある。現在、メーカーなど大企業を中心に利用されている。一方、EC事業者による動画広告の利用はあまり進んでいないようだ。動画広告を使って集客効果を上げるためには、動画自体の企画やネット広告との連携が必要で、EC事業者の負担が大きいからだ。ただ、動画共有サイトから新規顧客を開拓するほか、動画の利用による他社との差別化効果を見込み、動画広告の活用に期待しているEC事業者もある。

動画広告のメリット

 広告会社は現在、EC事業者に対し、動画共有サイト「ユーチューブ」における動画広告の営業を強化している。「約5000万人のユーザーから集客が見込め、グーグルと広告配信で連携できるメリットがある」(LOCUS・瀧良太社長)ためと話す。
 動画広告は、動画検索で結果とともに表示される「インサーチ」と、動画再生前にスキップ可能な映像を流す「インストリーム」の2種類が主に利用されている。
 「インストリーム」の場合、30秒以上の視聴がなければ広告表示の課金が発生しないメリットがある。広告会社によっては平均クリック単価が6~9円と見積もっている。テレビCMと比べて低コストで運用できる点が注目されているという。
 動画広告を最後まで見るユーザーは、広告内容に対する関心が高いと期待されている。動画広告を最後まで閲覧した視聴者をリスト化し、見込み顧客としてサイトの集客に活用できる。
 デメリットは、動画制作にかかる費用が一般のネット広告に比べて高い傾向にあることだ。顧客層以外に広告が配信されると、動画視聴を邪魔されたと感じたユーザーが広告主に対し不快感を持つ危険性もある。
 「ユーチューブ」への広告出稿は、グーグルのネット広告とデータを連携している。動画を一定時間以上閲覧したユーザーを潜在顧客に設定。検索広告の配信先絞り込みに活用できる。
 「複数の媒体で広告出稿を行い、動画広告は話題を広げる着火剤にするなど、プロモーションの中で役割をしっかり決めて利用する企業もある」(同)と言う。
 今後の集客手段として、動画広告の活用に期待するEC事業者も存在する。ネット広告と連動させることで、集客窓口の一つとして活用を検討したいという意見が複数のEC事業者から寄せられた。
 「検索エンジンに加え、競合の参入が少ない動画共有サイトの検索から集客を期待している」(クリエイティブ・アライ・荒井晋社長)と語る。


何をテーマに動画を作るか

 動画広告の利用は、何をテーマに広告を制作するかも重要な要素になる。バナー広告とは異なり、商品に加えビジュアルや音などの演出要素が増えるためだ。
 過去にオイシックスなどの事業者が、食品の宣伝で動画共有サイトを利用した事例がある。オイシックスはおせちの宣伝に「インストリーム」の動画広告を利用。12~13年の年末に、他のネット広告と連携してキャンペーンを実施した。おせちの発売について臨時ニュースを読み上げるという形式で、アニメーション動画を展開した。
 宣伝する品目によっては、動画自体が作りにくいことも、EC事業者による動画広告の利用が広がっていない一因となっているようだ。
 雑貨類を扱うEC事業者によると、キーホルダーなど特別なギミック(仕掛け・効果)がない商品を動画で見せることは難しく、利用を見送ったと証言する。
 動画広告を実際のサイト集客などで活用するためには、広告自体の企画や他の広告との連携を含め、詳細な計画を考えることが、EC事業者には求められそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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