【進化するリピートEC】 〈D2Cは本物か 前編〉スパーティー 深山陽介代表取締役CEO、バルクオム 野口卓也代表取締役CEO、サティス製薬 山崎智士代表取締役社長/ブランド、製造会社が語るD2Cの舞台裏

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(左から)サティス製薬・山﨑智士社長、バルクオム野口卓也CEO、スパーティー・深山洋介CEO

 リピートECにおいて”D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)”というビジネスモデルが注目を集めている。バルクオムはメンズスキンケアのD2Cブランド「BULK HOMME(バルクオム)」で成長しており、スパーティーはD2Cモデルのパーソナライズシャンプー「MEDULLA(メデュラ)」で話題を集めている。D2Cは「既存の単品リピート通販と何が異なるのか」「今後さらに成長するのか」などについて、バルクオムの野口卓也CEO、スパーティーの深山陽介CEO、さらにこの2社の製造パートナーであるサティス製薬の山崎智士社長に聞いた。

 ─D2Cはどういったビジネスモデルだと考えているのか。
 山崎 業態のカテゴリーは製造小売り(アパレルで言うSPA)で、そこにデジタルテクノロジーの要素を取り入れたのがD2C。デジタルテクノロジーにより、従来の製造小売りより、低コストかつハイスピードでユーザーとの関係性を構築していくことが特徴だ。
 野口 米国のD2Cのスタートアップが、単品リピート通販と異なっている点は、LGBTや貧困問題など社会性の高いテーマに切り込んでいるところ。欧米では課題解決に取り組むプロダクトを主にネット上でプロモーションし、ブランドを構築するという考え方のスタートアップが増えているようだ。
 深山 欧米も日本も共通してブランドが作りにくくなっている。そんな中でブランド作りを模索するやり方がD2Cだと思う。ビジネスモデルというより、スタンスに近いのかもしれない。
 ─販売チャネルでいうとネットに特化しているのがD2Cなのか。
 深山 個人的には「UX(ユーザーエクスペリエンス)」「データ」「チャネル」の3点がD2Cに必要だと考えている。スマホに最適化されたUXを構築し、店頭では取れなかったデータを商品開発に生かそうとしている。チャネルについてはネット販売がメインだが、ショールームのような形でリアルも効果的に用いていきたい。
 山崎 米国でD2Cのモデルになっているブランドの多くは、ユーザーとのコンタクトポイントとしてのリアル店舗を持っている。ただ、店頭では販売せず、店頭で商品確認をしてオンラインで購入するスキームになっている。店頭で売らない理由のひとつに、店頭に在庫を抱えることが、小売りにとってネックになるからだ。D2Cは顧客に合わせてカスタマイズするプロダクトも多く、商品のバリエーションが増えていくことからも、オンラインでの購入を促すことが流通在庫を極力減らすという点で合理的だと考える。
 野口 当社はリアルの販売店にも商品を卸している。シェア志向を持っており、「男性向け化粧品といえばバルクオム」というマインドシェアを早期に獲っていきたい。そのためにはあらゆる販路を攻略したいと考えている。

■製造リスクは課題
 ─「メデュラ」は製造委託先が無免許で営業しており、一時は生産中止に追い込まれた。今後、D2C企業が製造トラブルを防ぐ方法は。
 山崎 製造業界の関係者と今回のトラブルをどうすれば防げたのかディスカッションしたが、委託先の不正を見極めるのは非常に難しいだろう。ましてや委託監査が未経験だったらなおのこと困難だ。実在している許可書を基に偽造していたら、行政に問い合わせても存在確認ができてしまう。製造現場に監査に行っても目の前で製造していたら信用してしまいかねない。
 野口 大手の製造会社に任せるという手もあるが、それも微妙なことが多い。D2Cのスタートアップは既存のラインでは作れないプロダクトを開発したいと考えているところが多く、新しい技術や製造方法にトライしてくれる会社と組みたいと考えている。大手では難しいこともある。
 深山 D2Cが盛り上がる中で今後、私たちのように業界に参入する企業が増えるだろう。新規参入企業は製造委託先を手当たり次第に当たって聞くしかない。他にも不正を働く製造会社があったらまた同じようなことが起こるかもしれない。
 ─「メデュラ」は製造トラブル発覚後、サティス製薬に製造を委託することになった経緯は。
 深山 サティス製薬には助けていただいた。今回、トラブルはあったが、諦めるということは考えていなかった。事態が発覚した次の日には山崎社長にご連絡させていただいた。
 山崎 やるという意思表示は深山さんから不正の事態を聞いたその日に伝えた。実は「メデュラ」のリリース前にも一度製造のご相談をいただいており、そのときは”利益が出ない”ことを理由に当社の営業担当がお断りしていたらしい。その後、この事件を機に再度ご相談いただき、多くの被害者が出てしまうことを避けたい一心で支援を決めた。また、パーソナライズというサービスモデルにも関心があった。懸念の利益も出ないことはないのではないか。例えば、メーキャップ品の口紅は大量にラインアップされているが、収益を出しているのはその中でひと握り。そのひと握りの利益で全体をカバーしている。「メデュラ」でも同様の収益モデルが適応できるのではないかと考えた。やるなら外から見るのではなく、一緒に取り組む方が断然勉強になる。やると決めたからには、「メデュラ」を生存させないと意味がないため、1カ月程度で開発・制造を実行した。

■残るのは一握りか
 ─D2Cのうねりは今後拡大していくと思うか。
 深山 D2Cブランドは今後も増えていくと思う。しかし、そのブランドがマスになるかというとほとんど難しいと思う。D2Cのブームは、キュレーションメディアブームと近いという見方もある。「ブームだから」と始めたキュレーションメディアが生き残るのは難しかったように、そういう状況がD2Cにも起こり得る。残っていくためには商品の本質的な良さを追求し、指名されるブランドにならなければいけない。
 野口 私も同感で上位5〜10%だけがスケールしていくのかなと思っている。スタートアップは基本的にニッチなマーケットから攻めざるを得ないので小粒な会社がメインとなりそう。それでも優れたアイテムやブランドが出てくることは、世の中にとっていいこと。ずっとITをやってきて、本当はモノづくりがしたかったという人には良い流れだと思う。  (つづく)

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