【通販市場予測】 実力試される試金石/コロナバブル崩壊で正念場 (2022年1月1日新年特大号)

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■コロナ収束も

 通信販売市場は22年、各通販事業者の実力がより試される試金石の1年となりそうだ。20~21年の通販市場は、新型コロナウイルスの感染予防の影響で巣ごもり需要が発生。特に通販事業者が売り上げを成長させた20年はある意味、「コロナバブル」と位置付けられるような1年だった。巣ごもり需要の余波は21年、やや薄れてきているものの、売上高において依然コロナ禍の恩恵を受けている通販事業者も少なくない。コロナの収束といった状況が予想される22年は、通販業界にとって過渡期と位置付けられそうだが、それはある意味、個々の通販事業者にとってはその手腕が試されることになる。
 21年12月、コロナはオミクロン株の感染拡大が話題として上がっている。詳細は不明だが、連日の報道などによると、オミクロン株は感染力が強いものの強毒性はないとの指摘がある。さらにワクチン接種回数の増加や飲み薬の開発といった背景を考慮すると、コロナの状況が落ち着くとの見方ができよう。このことは通販業界にとって、「コロナバブル」の崩壊を意味することになり、通販事業者の実力が鮮明になると思われる。


■サービス均一化

 繰り返されるUI/UXの改善や決済手段の多様化などにより、各通販事業者はユーザーがより便利に通販を利用できるような環境を整えてきている。これは配送における受け取り手段の選択肢拡大にも言えることだ。EC事業における支援系サービスの充実や、ECモールにおける販促手段、サービスの強化などもユーザーの利便性向上につながっている。
 ただ、こうしたサービスの拡充手段は、いずれ各通販事業者が取り入れるようになり、一時的に先発メリットが見込まれるものの、ゆくゆくはサービスの均一化、横並び化を招くことになる。これは、これまで各通販事業者が導入したサービス内容を振り返っても明らかだろう。


■異業種と協業も

 そうなると、通販事業者者が本当の意味で実力が試されるということは、よりオリジナル性の強い商品の開発、他社とは違った商品の開発を試行し続けなければならない。だが、大手ECモールによる価格競争にさらされている通販事業者にとって、独自性のある商品開発を続けることは容易なことではない。
 商品情報の収集や商品に関するアイデアの追求はもちろん必要だ。だが、既存の商品開発や仕入れといった側面だけではなく、新たな商品開発方法を模索したり、既存以外の新規市場に打って出たりすることも検討する必要がある。
 千趣会が21年に策定した新中期経営計画は、その方向性を探る一つのヒントを示しているかもしれない。思想や理念を共有する協業先と組んで、顧客の多様な価値観を理解した上で、商品やサービスを提供していく。
 このほか、テレビ東京ダイレクトは12月22日、地域活性化事業においてクラブツーリズムとの連携を締結した。クラブツーリズムの旅行商品造成力・誘客力や、テレビ東京ダイレクトの特産品開発力・販売、番組制作や放送といったノウハウを生かして、地域と共創しながら旅行や商品の販売強化を図っていく。
 独自に商品や新市場を開拓するだけなく、協業先や取引先とタッグを組むことで売り上げ拡大につなげていくという流れは、通販事業者の実力と同時に発想力や創造力にも影響を与えていきそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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