和食缶詰ブランドを展開する浪速工作所(本社大阪府、谷本和考社長)は3月18日、板前の技術を封じ込めた高級和食缶詰の本格展開を開始した。「完成された一皿」がコンセプト。従来の食材缶の概念を覆す、1缶2500円という高単価に設定した。自社開発の小ロット生産設備を武器に、地方の中小製造者・生産者が利益を確保できる新たな流通モデルを構築。海外・インバウンド市場の開拓を狙う。
同ブランドの最大の特徴は、本格的な日本料理の工程をそのまま缶の中に再現している点にある。
例えば「真鯛(まだい)の火鍋」では、愛媛県産の真鯛を生け締め状態で運び、板前が塩締めで臭みと水分を抜き、琥珀(こはく)色の身を洗いにかけるといった職人技を施す。「真鯛の酒蒸し」には日本酒の銘醸「久保田」の純米大吟醸を使用するなど、調味料にも一切の妥協がない。
光・空気の遮断、真空殺菌といった、缶詰の特性を最大限に活用し、保存料を必要としない無添加製造と常温での3年保存を両立。冷蔵・冷凍不要で持ち運びが容易な輸出・土産に最適な和食としての地位確立を目指しているという。
事業の原点は、京都の障害者就労支援施設から寄せられた「地元の食材を自分たちの手で缶詰にしたい」という声だったそうだ。
同社では、100個単位から製造可能な小ロット・多品種対応の缶詰製造機を自社開発。この設備により、地方の中小企業が抱える、在庫リスクや販路開拓の課題を解決したという。
同社は、機械の販売だけでなく、製造ノウハウからデザイン、マーケティングまでを一括支援する事業を展開している。現在42種類の缶詰のラインアップを展開するまでに成長した。
国内の低価格競争に飲み込まれるのではなく、日本の食の価値を正当に評価してくれる、海外市場とインバウンド需要を取り込もうとしている。
「日本食を海外へ持ち帰ってもらう、唯一・最強の手段は缶詰」と断言する谷本社長。4月中旬からは自社ECと越境ECを本格稼働させ、7月には台湾での店舗展開(ホテルのショップなど)も予定しているという。
真鯛が一生「つがい」で過ごすという習性から、結婚式の引き出物(めでたい)に使われるといった日本独自のストーリーを付加価値として訴求し、欧米市場への進出も見据えている。
【ネクストブレイク】 浪速工作所 <1缶2500円の缶詰> 小ロット多品種で日本の食文化を世界へ(2026年4月30日・5月7日合併号)
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