【千原弁護士の法律Q&A】▼438▲ 元社員による当社会員への声かけ、警告できるか?(2025年9月18日号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

【質問】



 連鎖販売会社を経営しています。このほど、退職した社員Aが、同業の連鎖販売会社のX社に就職しました。そのAが、当社の会員に対して、X社への登録を声がけしていることが分かりました。Aからは退職後に同業者に就職しない旨の誓約書も取っています。しかし、この件を当社の顧問弁護士に相談したところ、Aに警告するのは難しいという回答でした。どうにも納得がいきませんが、そのとおりなのでしょうか。また、当社としてはどうすれば良かったのでしょうか。(ネットワークビジネス会社社長)

【回答】「顧客接触禁止条項」の記載なければ難しい



 労働者が、退職後、同業者に就職しないことを定めた「競業避止義務」の有効性については、裁判所はとても厳しい対応をしています。
 まず競業避止を定めた「誓約書」が存在しない限りは、効力は一切認められません。貴社はこの点はクリアしています。
 しかし誓約書が存在しても、裁判所は、競業避止の期間や地域、業態等が合理的に限定されているか、さらに退職金とは別に代償金(同業者に就職しないことの労働者の損害を補償する意味合いの金銭)が支払われているか等の事情を総合的に考慮して、その有効性を個別に判断してきました。
 そして2020年代以降の判例では、

(続きは、「日本流通産業新聞 9月18日号で)

<プロフィール>
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

千原弁護士の法律Q&A 連載記事
List

Page Topへ