【千原弁護士の法律Q&A】▼432▲ 盗撮で逮捕された社員の解雇、問題はあるか(2025年6月19日号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

<質問>



 当社の若手社員のAですが、これまで勤務態度に問題はなかったのですが、急に2日ほど無断欠勤が続き、連絡を入れても反応がありません。心配していたところ、警察署から連絡があり、電車内の盗撮で逮捕されたとのことです。それだけではなく捜査の過程で、当社の女子更衣室にカメラを仕掛けて、女子従業員2人への盗撮も行っていることが分かったということです。警察からは、被害を受けた従業員から事情を聞きたいと言われています。そこでご相談ですが、(1)すぐにAを解雇したいですが問題ないでしょうか(2)当社から女子従業員に話すに当たっての注意点を教えてください(3)女子従業員との関係で当社が責任を負担することはあるでしょうか(4)これが報道された場合、当社としては外部に向けて謝罪のアナウンスをする必要があるでしょうか─。以上4点について教えていただけますと幸いです。(訪問販売会社社長)

<回答> 会社に直接的被害あれば解雇も


 盗撮で捕まる人は、昔からいましたが、スマホの普及によって一気に増えたようで、このような相談をよく受けます。
 (1)の解雇ですが、警察の申告どおりであれば、えん罪の可能性も低そうですし、就業規則に「犯罪行為があれば解雇できる」規定があれば、十分にあり得ると思います。
 特に他の従業員に被害を及ぼし、会社にも直接的な被害があるので、他で盗撮を行ったケースより、解雇の合理性は高いと思います。また、この状況で、本人が解雇処分を争う可能性も低そうです。
 万一、報道等された場合、既に解雇済みであれば、その点を世間にアピールできるメリットもあります。
 ただ、一般的には、法的に解雇が認められるハードルは高いので「無難に行く」のであれば、(本人と交渉できるタイミングで)本人から退職願いを出してもらう形も選択肢になります。

(続きは、「日本流通産業新聞 6月19日号で)

<プロフィール>
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

千原弁護士の法律Q&A 連載記事
List

Page Topへ