【訪販営業支援〜8人が語る「営業のメソッド」〜】マーケティング・トルネード 佐藤昌弘 社長/「助ける」ことで心の距離はぐっと縮まる

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佐藤昌弘 社長

佐藤昌弘 社長

 各種マーケティング支援のコンサルティングを行うマーケティング・トルネード(本社愛知県、(電)0567―94―1087)の佐藤昌弘社長は、ヒットビジネス書「凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク」の著者としても知られる。同書は03年の初版発行からこれまでに37刷の重版を行っており、発行部数は13万部を超える。佐藤社長の著書の累計発行部数は60万部にも及んでいるという。佐藤社長の守備範囲は幅広く、コンサルティングの対象はいわゆる営業系企業にとどまらない。近年は通販・EC企業からの依頼も増えているという。心理学やカウンセリングの豊富な知識を生かし、マーケティング支援を幅広く行っている佐藤社長に、訪販営業マンが明日から活用できる営業ノウハウなどについて聞いた。

 ーーー著書「凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク」はロングセラーになっていますね。

 佐藤 おかげさまで、初版発行以来37刷を重ね、発行部数は13万部超になりました。シリーズのムックまで合わせると、同シリーズだけで20万部を超える発行部数になります。

 ーーー訪販会社などからの営業関連のコンサルティング・研修・講演の依頼が多いんじゃないですか。

 佐藤 確かにそうした依頼も多いですし、実際に、営業戦略やセールスに関する講演・研修・コンサルティングはいろいろと提供しています。営業マンを対象にしたロールプレートレーニングでは、それだけで売り上げが10~20%上がるというケースもざらにあります。ただ近年は、通販・EC系の企業からの依頼も増えています。

 ーーー通販・EC企業にはどのような支援を行っているのですか。

 佐藤 例えば、商品のネーミングをサポートさせていただくことがあります。あるいは、通販のコールセンターの受電スクリプトを設計し、オペレーターのトレーニングまでを提供することもあります。折り込みチラシでいかにレスポンスを取るのかといったことも得意分野です。テレビ通販のインフォマーシャルの組み立てをすることもあります。ネット通販系では、アップセルの仕組みづくりを指導したり、メルマガのライティングの指導をしたりすることもあります。広告からランディングページまでを支援したケースでは従来比で3~4倍の実績を達成したケースもあります。

 ーーー幅広く支援を提供することができるのはなぜですか。

 佐藤 個々の手法や媒体は異なりますが、根底が同じだからです。私はこれまでに、社会心理学、臨床心理学、認知心理学、コミュニケーション心理学、交流分析など、心理学を幅広く学んできました。こうした知識を活用しながら、クライアントがどんな情報を求めているのかに応じて、多様な分野での支援を行うことができるのです。

 ーーー経営コンサルタントになった経緯を教えてください。

 佐藤 京大の工学部を卒業して、エンジニアとして地元の大手都市ガス会社に入社しました。その後、リフォーム訪販会社を創業し3年後には営業4人で年商3億円超を売り上げる会社に成長させました。そして、以前からの念願だった経営コンサルタントになるべく、その会社を01年に売却。02年にマーケティング・トルネードを設立しました。以来、個人事業主から、年商3兆円超の上場企業まで、幅広く研修やコンサルティングを提供しています。

 ーーー住宅リフォーム会社は、始めからうまくいったのですか。

 佐藤 それが最初は全く売れませんでした。私は、営業が大の苦手でしたから、本当に苦労しました。とにかく件数を回るしかないと思って1日220件を回っても、お客さまに話を聞いてもらうことすらできない日々が続きました。営業に行った先でお客さまから蹴飛ばされたこともあります。そんな中ではありましたが、たまたま知り合ったセールスマンからヒントをもらったりしたことなどがきっかけとなり、徐々に営業の仕方が分かっていったのです。チラシをポスティングして反響営業を行うスタイルに切り替えてから、軌道に乗り始めました。反響営業のノウハウをどんどんブラッシュアップしていったのです。最終的には、私とスタッフ3人で年に3億4000万円は売り上げたと思います。その際に得た営業のノウハウなどを分かりやすくまとめたのが「魔法のセールストーク」ということになります。コンサルタントとして独立後は、さらに研さんを積み、得た知見を参考にしながら、さまざまな実践的ツールやノウハウにまとめています。

 ーーー訪販の営業マンが、明日から活用できるようなノウハウを教えてもらうことはできませんか。

 佐藤 そうですね、例えば、飛び込み営業をする会社ならば、前日に自分のチラシをポスティングしておくアイデアを実践されてはどうでしょうか。うまくいけば、初日アポ率を5倍くらいに高めることができます。A4のチラシに「明日飛び込む〇山×彦と申します」と銘打って、自分の写真や取扱商品の写真、会社のプロフィール・説明、連絡先なども織り込んでおきます。そして文面には「私どもが扱う商品は、お客さまのお役に立てるものなのですが、売り方が訪問販売ということで、多くの方から怪しいなどと言われ、拒絶され、悲しい思いをしております。そこで、前日に手紙を投函させていただくことにしました。明日はよろしくお願いいたします」などとつづっておきます。この際、丁寧に、文法的に正しい文面にすることが大切です。これだけで、同じ飛び込み訪販でも、先方に与える印象を大きく変えることができます。ポストにチラシが残っている家には飛び込まないようにすればよいでしょう。
 訪問する前に、自分や自社の基礎情報を、A3用紙1枚にまとめておくというのも有効な手法です。人間の認知能力の限界が、ちょうどA3用紙1枚と言われています。訪問先でそのペーパーを見せることにより、相手の緊張感を解いたり、親近感を感じさせたりできます。丸腰で訪問するよりツールを持って行った方が、はるかに成功率を高められます。
 あとは、訪問先で、何か助けてあげられることを探すのも有効です。家の前の自転車が倒れていたら立て直してあげるといったささいなことでいいのです。心理学では、「助けた人」を「助けられた人」が好きになるだけでなく、「助けられた人」を「助けた人」が好きになることも分かっています。お客さまを助けてあげることにより、互いの心の距離をぐっと縮めることができるのです。

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