【訪販営業支援〜8人が語る「営業のメソッド」〜】シンプルタスク 吉井雅之 社長/これからは本音、本性磨くことが必要

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吉井 雅之 社長

吉井 雅之 社長

 「ナニワのメンター」の異名でも知られるのが、習慣形成コンサルティングを行うシンプルタスク(本社東京都、(電)03―3947―7706)の吉井雅之社長だ。数多くの企業・個人に向けて人材育成コンサルティングを提供し、実績を挙げてきた。「これからの時代は本音、本性を磨く必要がある」と話す吉井社長に話を聞いた。

 ーーーまず、吉井社長が人材育成に携わることになった経緯を教えてください。

 吉井 人生のドン底を味わった後、30歳で数多くの能力開発セミナーに参加、その後32歳で大手石油メーカーの社員になったことが転機となりました。その会社では、人材育成業務に携わったのですが、マネージャーとして、実績を前年比で40%伸ばし、前年比コンクールで3位を取りました。その次の年も前年比50%増を達成、今度は同コンクールで2位になりました。人を育てることに喜びを感じ、05年には「中小企業の目的を達成するための人材育成のお手伝い」を理念とするシンプルタスクを設立したのです。シンプルタスクでは、幅広い業種の企業や個人に向けて、コンサルティングや習慣形成トレーニングの提供を行っています。

 ーーー訪販企業の人材育成において、最近感じることはありますか。

 吉井 以前にも増して、人間力が問われるようになってきていると感じます。「ベンツに乗りたい」という一心で営業マンが訪販に取り組んだ時代もあったでしょうが、こうしたやり方にはいずれ限界が来ます。そういう人には協力者が現れないからです。
 人間にとっては、地位やお金といった社会的成功も大切ですが、人間的成功も大切なのです。人間的成功の指標は「人があなたを無償で応援してくれるか」です。
 訪販の人材育成においては、営業の方法を徹底的にトレーニングしていることと思います。ロールプレイングを取り入れている企業も多いでしょうし、笑顔の練習もするでしょう。ただ、そうしたトレーニングと同時に、「人としての在り方」を磨いていかないと、今の人は目が肥えていますから、見抜かれてしまいます。知らず知らず、言動の端々に、本音、本性が垣間見えてしまうのです。本音、本性を磨いていく必要があります。

 ーーーどうやって磨くのですか。

 吉井 「何のために」を一人一人に徹底することも大切です。例えば健康食品を販売するのならば、「高齢化が進み医療費が年々増大する中、サプリメントで健康な人を増やし、医療費の財政負担を減らし、日本を救うんだ」といった目的意識を、一人一人に持ってもらうことです。
 リーダーとしての在り方を考えるときにもそうです。やはり「思い」を持ったリーダーに、周りの人間はついてきます。「一肌脱いであげたい」と部下に思ってもらえるかどうかが大切です。
 「部下だから上司の言うことを聞いて当たり前」という考え方はよくありません。私は、この「当たり前」が増えるたびに不幸になると考えています。「会社だから○○して当たり前」「上司だから××して当たり前」「部下だから△△して当たり前」と人間は思いがちです。それでは、感謝の気持ちが生まれません。訪販でピンポンを鳴らして話を聞いてくれた人がいたら、それは決して「当たり前」のことではありません。「帰れ!と言われるのが普通なのに、わざわざ話を聞いてくれた」と思えば、「本当に今日はありがとうございます」という深い感謝が自然とあふれてきます。それが本音、本性であり、お客さまにも伝わります。売れている訪販営業マンは、自然とこんなことが身に付いているのだと思います。

 ーーー吉井社長は「習慣化」することの大切さを説いておられますね。

 吉井 習慣化した行動が、自分自身の脳を変えていくのです。習慣自体は、毎日靴を磨くでも、靴をそろえるでも、日記を書くでも構いません。とにかく自分が決めたことを続けることが大切です。1日の終わりに「良かったこと」「改善すべき点」「明日の決意」をノートに書く習慣をつけただけで、大きく変わってくると思います。今の時代、ネットを開けば何でもできますから、「何気なく」生きてしまいがちです。何気なく生きてしまわないために、習慣化することが大切なのです。

 ーーーAI(人工知能)などの台頭が話題に上るIT時代における訪販の在り方についてどのような考えをお持ちですか。

 吉井 AIが台頭し、ネット通販全盛の今、訪販は一見、時代に逆行した販売方法にも見えます。ただ、本当に必要がない販売方法であれば、すでに淘汰されているはずです。淘汰されていないということは、訪販に役割があるということです。では、何のために訪販が必要なのかということを、考えていかなければなりません。ネット通販には伝えきれないワビサビを伝えるということもあるのではないでしょうか。言われたことをただやるだけならばAIでもいいはずです。そう考えると、訪販企業にとっては、テクニックの教育だけでなく、やはり人間力を高めていく「人としての教育」が不可欠だと考えます。

 ーーー御社が提供する企業コンサルティングでは、どのような成果が生まれていますか。

 吉井 過去7年を振り返ると、1年以上にわたってがっつり、チーム作りのコンサルティングに入った企業が約30社ありますが、その30社はすべて増収増益となっています。企業だけでなく、スポーツチームや受験生のメンタルサポートなども行っており、こちらでも実績が上がっています。ビジネスだけでなく、勉強やスポーツでもやはり、「何のために」を明確化することが大切なのです。「自分のため」だけでは、「まあいいか」と途中でくじけてしまいがちです。

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