【リピートEC 成功の秘訣「真の顧客満足向上とは」】第18回 ブランドアイデンティティーの構築

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■顧客の心理に印象付ける

 今後、ECサイトで勝ち残るためには、「ブランド構築」を改めて見直すことが重要になってきます。
 10年ほど前は、ブランディングよりもプロダクトアウト(商品戦略)を重視して展開する企業が多くありました。その後、マーケットイン(市場の需要把握)へ移行。ここ数年はCRMの構築が普及してきて、各社がさまざまな方法で顧客との関係作りに力を入れるようになってきました。ただ、それも飽和状態となり、現在では、広告や商品はもちろん、CRMですら他社との差別化が難しい状態になっています。
 だからこそ、「ブランド構築」の見直しが重要になってきているのです。現在取り組むべきブランド構築は、「プロミスtoカスタマー」。つまり、ブランドの理念、考え方、コンセプト、アイデンティーなど、顧客に公言・約束することを、整理し直すということです。
 「プロミスtoカスタマー」をどう表現するかも重要なポイントになります。「プロミスtoカスタマー」を表現するには、二つの方法があります。
 一つが「by word(バイ・ワード)」。商品名やキャッチコピー、ライティングなど、言葉でブランドを伝える方法です。
 もう一つが「By Psychology(バイ・サイコロジー)」。心理的なブランディングをする方法です。これまで、「By Word」でブランドを伝えてきた企業が主で、「By Psychology」ができている企業はあまり多くありません。
 心理的なブランディングとは、「プロミスtoカスタマー」と顧客の心理が自然とリンクした状態、顧客がその商品になんとなく引き付けられる状態をいいます。
 たとえば、化粧品会社が「プロミスtoカスタマー」の一つに、「肌トラブルのない生活」を掲げたとします。これを言葉ではなく映像で表現するとき、これまでは「使用前」「使用後」を見せることで、商品の効果を訴えるケースが多くありました。
 心理的ブランディングでは、肌トラブルに悩む表情は見せず、すでに肌トラブルを乗り越え、きれいな素肌で笑う人々だけを見せます。この映像で、肌トラブルのない素敵な毎日が手に入ることを印象付けるのです。
 つまり、「プロミスtoカスタマー」に掲げた言葉はあくまでも社内向けなのです。そのブランドアイデンティティーを顧客の心理にどのように印象付けていくのか。これが、これからのブランド構築なのです。


■ブランド構築のメリット

 このようにして顧客の心理を引き付けるブランドが構築できれば次のようなメリットを得ることができます。
 (1)高い売り上げが作れる(2)新規顧客の獲得コストが下がる(3)ブランド価値の寿命が長くなる(4)顧客のLTVが上がる(5)新商品を出したときに売りやすくなる(6)競合他社を排除できる─の六つです。
 一般的に、ブランドの寿命は約20年といわれています。適切なタイミングでブランドアイデンティーを構築し直すことで、その寿命を長く維持することができるのです。


〈筆者プロフィール〉
 1980年生まれ、大学卒業後、総合通販のベルーナに入社。入社後すぐに売り上げナンバーワンを記録。その後、東証一部上場企業の営業部長などを経て退社。
 09年にライフェックスを設立し、一貫して通販・ダイレクトマーケティングに従事する。日本通販CRM協会役員兼務。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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