【特商法改正 数字の妥当性】第2回 通販の消費者相談/発生率は推定0・01%

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 特定商取引法と消費者契約法の見直しをめぐり、虚偽・誇大広告を見て契約した消費者に取消権を与えるなど、通販に対する大幅な規制強化が検討されている。規制の根拠として、通販に関する消費者トラブルが増えていることを指摘する消費者団体や学者らは少なくない。しかし、「通信販売」に関する相談の中には、一般的な通販とは無関係な内容が多く含まれている。消費者被害の詳細も、ほとんど公開されていないのが現実だ。規制強化の根拠となる消費者相談の実態が不明瞭なまま、法改正の議論が進んでいる。

アダルトサイトが31%
 13年度に全国の消費生活センターに寄せられ「通信販売」に関する消費者相談の件数は、消費者庁の集計によると25万759件だった。しかし、相談の原因となった商品や役務の内訳を見ると、通販とは無関係の項目が多数含まれることが分かる。
 商品・役務別で最も多いのは「アダルト情報サイト」で約31%。「出会い系サイト」は約5%、オンラインゲームなどの「デジタルコンテンツ」は約7%を占めた。
 つまり、13年度は物販以外の相談が少なくとも約43%、件数にして約10万8000件も含まれているのだ。この数字を差し引くと物販に関する相談は多くとも約14万件ということになる。
 物販に関する消費者相談は、通販業界で発生する契約の何割を占めるのだろうか。
 公益社団法人日本通信販売協会が推計した13年度の国内通販市場規模は5兆8600億円だった。通販における1契約当たりの販売単価を5000円と仮定すると年間契約件数は11億7200万件になる。
 これらの数字を基に計算すると、消費生活センターに寄せられた通販に関する相談は、通販の年間契約件数の0・012%。消費者相談は1万件当たり1・2件にとどまっていることになる。

健全な活動を阻害

 全ての消費者トラブルが消費生活センターに寄せられているとは限らない。それでも、通販における契約の大多数は問題なく行われているのが実情といえる。
 ごく一部の消費者被害を強調し、それを撲滅するという大義名分で過度な規制を導入すれば健全な事業活動まで阻害される。まっとうな事業者が法規制を順守するためのコストを商品価格に上乗せすれば、結果的に消費者の不利益も招く。
 悪質事業者の排除や消費者保護を実現するために法律を改正するのであれば、まずは消費者被害の実態解明が欠かせない。
 一般的な通販会社が引き起こしている消費者被害は何件あり、被害の実態はどのような内容なのか。そうした事実を詳細に分析した上で、必要な法改正の議論に着手すべきだ。
 特定商取引法と消費者契約法の見直しに向けて議論している消費者委員会は8月中に中間報告をまとめる。9月以降は委員会のメンバーが見直される可能性が高い。議論を仕切り直す格好のタイミングとなる。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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