【ウィズコロナ・アフターコロナのコールセンター】 〈インタビュー〉 「コロナ後」の体制づくりも急ピッチ〉NTTマーケティングアクト 横山桂子社長/人とAIの融合を実現、CXのプロ集団を目指す

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 コンタクトセンター事業を行うNTTマーケティングアクト(本社大阪府、横山桂子社長、(電)06―6450―5460)は、感染防止対策の整備など、「コロナ後」に対応できる体制づくりを急ピッチで進めてきた。7月16日には、NTTグループ3社と共同で、コンタクトセンター運用の共通基盤「ONE CONTACT Network(ワンコンタクトネットワーク、以下新基盤)」の提供を開始することを発表。同基盤では、複数センター運用における適切なリソースマネジメントや、オペレーターの在宅化を含め「真のロケーションフリー」を実現できるという。「『ProCX(プロクス)』という新たな宣言の下、人とAIの融合を実現し、CXのプロ集団を目指す」と話す横山社長に話を聞いた。

 ─コロナが業績に与えた影響は。
 20年3月期の業績には、特段影響がなかった。20年4―6月期(第1四半期)については、マイナスとプラスの両方の影響があり、結果として前年同期比でやや伸びた。
 ─影響について、より詳しく聞きたい。
 マイナス面の影響では、クライアントの仕事に影響が出た部分があった。新たに予定した案件が延期になったものもあった。一方、プラスとして一番大きかったのは、給付金関係など省庁からのお仕事をさせていただけたことだ。コロナの影響で需要が伸び、受託する業務が増えた、一部のクライアントもあった。
 ─コロナ後の取り組みについて聞きたい。
 コールセンター内の感染防止の仕組みを、ドタバタの中で作り上げてきた。マネジメント部門が中心になって、3月末ごろから感染防止の取り組みを順次進めていった。手指の消毒や、マスクの着用はもちろん、オペレーターに1席ずつ開けて座ってもらうといった取り組みも行った。オペレーターをチーム分けし、チームごとに動線や休憩所を変えたりもした。スタッフの検温や、パーテーションの設置なども実施した。仮に、罹患者が発生したとしても、濃厚接触者を最小限にできるよう、考え得る限り最大限の備えを行った。
 ─席数を減らすと、対応能力が落ちるのでは。
 確かに能力が落ちた部分はあった。緊急事態宣言中は特に、席数やコール数の削減を、クライアントにお願いしたこともあった。現在では、座席間のパーテーションやチームごとの導線の確保などで対応している。感染防御を確保した上で、対応能力を落とさない方法が構築できてきており、お客さまにコール数削減をお願いすることも現在はない。
 ─さて、御社などNTTグループ4社は、コンタクトセンター運用の共通基盤「ワンコンタクトネットワーク」の提供開始を7月16日に発表した。複数拠点間のジョブ連携を可能にし、在宅オペレーターを含めた「真のロケーションフリー」の実現に貢献するなど、コロナ後のセンター運営に役立つ要素が多く含まれていると感じるが、コロナを受けての施策か。
 1年くらいかけて準備を進めてきた取り組みだ。もともと、当社には西日本だけで大小含め40カ所のセンターがあり、センター間をバーチャルに結び、マルチセンターで複合的にやっていかないと強みを生かしきれないという問題意識があった。在宅オペレーターを視野に入れたネットワークづくりも当時から進めていた。コロナがあったため、コロナ後のコールセンター運営に役立つという部分も含めて発表させていただいた。
 ─オペレーターの在宅化は、すでに行っているのか。
 クライアント1社については、ご要望に基づき、オペレーターを在宅化している。別の2~3社からも同様のご要望をいただいている。在宅勤務の方が、コロナ禍でも安定的なコールセンター運営につながると考えていただいているようだ。コロナの影響を差し引いても、在宅化のメリットはある。熟練した優秀なオペレーターが、出産・育児を機に退職するケースがこれまではあった。優秀な人材の確保につながるという観点から、在宅化のご要望をいただくケースもある。今後も在宅化の需要は増えてくるだろうし、当社としても増やしていきたい。
 ─その在宅化をよりやりやすくするのが新基盤ということか。
 新基盤が役立つのは在宅化だけではない。例えばこれまでインハウスのコールセンターでやってきたという企業でも、コロナによる席数の減少で、外部のコールセンターと協力して受電業務を行うといったケースが出てきている。そんなときにも役立つのが新基盤だ。
 コロナ後、当社のオペレーターに、在宅勤務を希望するかアンケートを実施した。その結果、4割が「希望する」、6割が「希望しない」だった。「希望しない」と答えた人に、何が不安かを複数回答で聞いたところ、7割が「一人で、お客さまの問い合わせにスピーディーに対応できるか不安」と答えた。その不安を解消できるのが新基盤だ。コールセンターでは通常、顧客対応に困ったオペレーターが手を挙げると、スーパーバイザー(SV)が飛んできて、対応のサポートをしてくれる。新基盤では、センターにいるときと同様のサポート環境をバーチャルで実現することができる。チャットによるサポート機能だけでなく、オペレーターの耳元に、顧客に聞こえないようにささやきかける「ウィスパー機能」も搭載しており、多様なサポートが可能だ。
 こうした仕組みがあるからこそ、当社では、チャット・メール業務だけでなく、コール業務もつつがなく在宅化することが可能なのだ。
 同様のマネジメントは、同じ基盤を共有していれば、複数拠点間、複数会社の複数センター間、クライアントのセンターとの間でも可能だ。コロナや災害などで一つのセンターが稼働不能になったとしても、複数拠点間で基盤を共有していれば、業務を持続できる。BCP(事業継続計画)の観点からも有用だ。新基盤はカスタマーリレーションテレマーケティング(本社大阪府)やウイング(本社広島県)との連携も予定しており、通販業界にも幅広くサービス提供ができる流れになるかとは思っている。
 ─これから強化したい施策は。
 もともと、「人とAIの融合」をテーマに掲げており、その部分を加速させたい。VOCの有効活用についても、FAQの自動作成についても、ノウハウも確立している。こうしたものを基盤に載せたりしながら、デジタルの分野を伸ばしていきたいと考えている。コロナ後に急増している「顧客接点のデジタル化」という要望にもしっかりと応えていきたい。
 ─今後について聞きたい。
 当社では企業理念として「人こそかけがえのない財産」ということをずっと掲げている。われわれ、アウトソーサーにとって経営資源は人。人材の育成にはこれまで以上に注力していきたい。オペレーターもさることながら、ジョブを回せる、SV以上の人材をどう育成していくかが課題だ。人材育成の仕組みづくりをしっかりと行っていきたい。
 当社では今年3月、「ProCX」という新たな宣言を、社内外に向けて行った。「ProCX」は、「人とAIの融合」を通して、CXのプロ集団でありたい、というわれわれの思いを込めた造語だ。新たな宣言の下、人とAIの融合を実現しCXのプロ集団を目指していく。

「ProCX」のロゴ

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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