消費者通報制度を積極活用/東京、神奈川、静岡などが実施

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 東京都をはじめ各県の地方自治体では、訪販や通販、EC事業者の不適正な取引や不当表示に関する情報を通報できるウェブサイトの運用が広がっている。東京都、埼玉県、神奈川県、京都府などがすでに通報サイトの運用を実施し、今年9月には静岡県も開設した。地方自治体が設置する消費生活センターの相談受付時間が日中に限られており、利便性が良くないことに加え、若者が電話で相談を控える傾向にあることが取り組みの理由だ。消費生活センターに入らなかった情報も幅広く得ることで、各自治体は迅速な行政指導や行政処分につなげていく構えだ。

 静岡県は9月10日に、不当な取引や事業者からの不審な勧誘などの情報を通報できる「不当取引通報POST24」と、ウソや大げさな表示をしている事業者の情報を通報できる「不当表示通報POST24」の運用開始している。
 通報サイトを立ち上げたきっかけは、各自治体の消費生活相談窓口の多くが9~17時で対応しており、就労者からの消費生活相談を受け付けることが難しかったためだ。「消費生活センターの相談は日中自宅にいる高齢者に偏りがあった。幅広い層からの相談を受け付けたい」(くらし・環境部・県民生活課)と狙いを話す。
 サイト上には「お寄せいただいた情報は悪質事業者の指導・処分に活用させていただきます」と明記。場合によっては、通報者本人に県が聞き取りを行うことで、事業者指導につなげるとしている。事業者を陥れるような悪意のある書き込みだった場合については「ある程度の想定をした上で、内容を精査し、対応している」(同)。
 「不当表示」と指摘があった場合は、実際の表示を確認した上で、指導の必要があるかどうかを迅速に判断。その場で、事業者に電話(口頭)で「行政指導」するケースもあるという。一方で「取引」の場合は、「あくまで複数の相談があれば調査の対象となる」(同)としている。
 ただ、通販やEC企業への表示に対する口頭指導の場合は「行政指導」との認識が乏しいとの指摘もあり、事業者側は認識を改める必要があるかもしれない。
 他県に先がけて運用を行っている東京都では、18年に通報サイトをリニューアルして着実な成果につなげている。取引に加え、誇大広告窓口を加えることで通報件数を増やした。また、通報サイトからの情報を端緒に、行政処分につなげたケースも出ている。
 静岡県は開始から3カ月間の件数について「それほど寄せられていない」(同)と言い、まずは県民への周知をさせていくことで執行につなげていく考えだ。同様の取り組みは全国に波及することも予想され、事業者側はいっそうのコンプライアンス意識を高めていく必要がありそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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