【人気ネットショップの裏方事情】連載第75回 マルシェ活用し、顧客接点を創出

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リアルイベント「マルシェジャポン」を通じ顧客接点を創出

リアルイベント「マルシェジャポン」を通じ顧客接点を創出

食品を取り扱うECでは、実際に商品を食べてもらう「リアルイベント」を通じて顧客接点を作り出し、ECで購入してもらおうという取り組みが活発になっている。
 EC業界では、リアルイベントというと、ECモールが百貨店などで開催する「物産展」のイメージが強い。しかし、中小ECにとって、物産展への出店はハードルが高い。認知度が高まるというメリットがある反面、(1)在庫を抱えてしまう(2)人員を数日間派遣しなければならない119643といったデメリットもある。ECの責任者や担当者が数日間業務を離れてしまうのは、本業の運営に支障を来すことも容易に想像できる。また、主催者側から売り上げを求められるため、余計なリソースが必要になり、販売のプロではない社員にとって負担は大きい。
 こうした課題を解決する手段として、都心で開催されている「マルシェ」を活用する方法を紹介したい。09年から、農林水産省の支援により、全国7都市で開催されている「マルシェジャポン」というイベントがある。東京では、六本木アークヒルズで不定期に開催されている。出店費用は5万円と格安だ。拘束時間は長くても半日のため、本業のECにそれほど影響はない。
 北国からの贈り物では8月22日に、マルシェジャポン内で開催した北海道の特産品や農産物をPRするイベント「女性農業者×真夏の北海道マルシェ」に初めて出店した。北海道のECなどが出店し、都内の人に商品を広く知ってもらおうというイベントだ。当社のターゲットは、都心の顧客。EC事業者ではアプローチできないシニアをはじめ、こだわりの食品を求める層を取り込むのが狙いだ。分かりやすく言えば、オムニチャネルの食品バージョンともいえる。
 当社では、新商品のローストビーフを2時間で先着200人に試食してもらった。新商品の発表をこうしたイベントで行うのは初めだった。
 ここで重要なのが、スマホの活用。試食の際に、SNSで拡散してくれることもある。その際に、スマホサイトの利便性を高めておくことも必要だ。その場で会員登録するということもあり、新規顧客獲得に生かせる。その場で試食した商品が購入できることも、ECの強みだろう。
 実際に試食後、商品に興味を持ってくれた顧客に対して、サイトへの誘導チラシを100枚配布した結果、10件の新規顧客を獲得することができた。
 今回のイベントでは、クラウドファンディングも併せて実施した。北海道の農家などに交通費を寄付してもらい、金額に応じて特典を設けるという取り組みも始めている。北海道の良さをPRする「Dkdo」(本社東京都)が、クラウドファンディングサイト「FAAVO(ファーボ)」を利用し、目標の40万円を超える51万円を超える寄付を集めた。今回の寄付は次回開催の際に、北海道の農家の交通費として使われるという。
 ウェブマーケティングも日々進化を続けている。食品を販売しているECにとって、商品の魅力を伝えるには実際に試食してもらうのが最も適している。マルシェを活用して顧客接点を広げるのも一つの手だろう。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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