【米国のEC 最新動向】国内企業もオムニチャネルが必須に

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スポーツ用品チェーン大手のディックスは、店舗に店頭受け取りカウンターを設置してオムニチャネルを推進している

スポーツ用品チェーン大手のディックスは、店舗に店頭受け取りカウンターを設置してオムニチャネルを推進している

最終回の今回は、「IRCE」が開催された米国・シカゴで実際に体験した、オムニチャネルの実例に触れたいと思います。
 今回の訪米では、スポーツ用品チェーン大手の「DICKS(ディックス)」の店舗を視察しました。同社は近年、実店舗の新規出店に加え、EC関連の投資を増やすことでオムニチャネルを推進しています。年間売上高は約7000億円で、そのうちEコマース(EC)の売上高は約600億円に達しています。
 「ディックス」は米国でもオムニチャネルに積極的とされている企業の一つですから、「一体どれほどすごいオムニチャネルを体験できるのだろう?」と期待も膨らみます。
 シカゴ市内の店舗に入ったところ、「店内でも便利に使える専用アプリの告知」や「ネット専用受取カウンター」など、オムニチャネルの一部と思われる取り組みを確認できました。しかし、「これはすごい!オムチャネルの先進事例だ」と驚くほどの体験は、残念ながらできませんでした。
 実は、オムニチャネルの先駆者として有名な米国の老舗百貨店「Macys(メイシーズ)」の店舗を視察したときも、同じような印象を受けました。
 このときは、日本であらかじめネットで商品を購入し、ニューヨークの店舗で受け取りました。商品を受け取ったときの感想は、「普通に受け取れて便利だな」という程度。このときも大きな驚きはありませんでした。
 しかし、2社の取り組みをあらためて振り返ってみると、ネットで注文した商品を「当たり前のように店舗で受け取ることができる」という事実こそが、オムニチャネルの本質だったと気が付きました。
 オムニチャネルとは、目に見えるサービスや機能が全てではありません。むしろ、「便利な買い物体験」を支える水面下の取り組みやバックヤードを含めた、全社的な仕組みの構築が肝になっているのです。
 「ディックス」の視察後、「IRCE」の展示会で情報収集をしたところ、オムニチャネルで先行している企業はECを企業戦略と位置付けていることが分かりました。ネットと店舗の垣根を取り払い、いつでもどこでも顧客がストレスを感じることなく商品を買うことができる仕組みを作り込んでいるのです。
 今回の米国視察を通じて感じたことの一つは、オムニチャネルへの対応を着実に進めている企業が徐々に増えてきたことで、消費者は「いつでもどこでも買い物ができる」という便利な消費環境に慣れ始めているということです。そして、オムニチャネルの利便性を体験した消費者は、オムニチャネルにきちんと対応している企業から離れにくくなっているようです。
 オムニチャネルへの対応で先行する企業が顧客を囲い込んだ後に、ライバル企業があわててオムニチャネルに本気で取り組もうとしても、取り返しがつかない可能性がある。オムニチャネルのトレンドを見ていて、そんな怖さがあると感じました。
 今回の米国視察で感じたもう一つの重要な点は、日本の小売企業も今後、オムニチャネルへの対応が必須になるだろうということです。本気でオムニチャネルに取り組まなければ、いずれ業績が伸び悩むことになる可能性は高いと思います。実際に米国では、そのような現象が起きています。
 日本における物販関連のオムニチャネルの潜在市場規模を、当社では約40兆円と推計しています。成長が確実視されている市場へ参入するため、オムニチャネルを企業戦略と位置付けることが重要でしょう。
 当社は米国のオムニチャネルの動向や、日本におけるオムニチャネルの推進に関するセミナーや事業支援を行っています。ぜひご活用いただければと思います。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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