【特集 ECの売上拡大支援サービス】〈特別対談〉クラシコム 青木耕平社長 × ネットコンシェルジェ 尼口友厚社長/いかにコンテンツに文脈を付加できるか

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尼口友厚社長(写真左)と青木耕平社長(写真右)

良質なコンテンツの提供について定評のある雑貨ECサイトが「北欧、暮らしの道具店」。同サイトを運営するクラシコム(本社東京都)の青木耕平社長と、ショッピングSNS「♯cart(カート)」をリリースしたネットコンシェルジェ(本社東京都)の尼口友厚社長に、ECビジネスについて聞いた。「コンテンツマーケティングの難しさ」や「求められるECシステム」について、2人は意見を交換した。中小EC事業者が売り上げの壁を突破するために役立つ示唆もあった。

 青木 コンテンツをビジネスに生かそうと思っても、紙一重のところでうまくいったり、うまくいかなかったりする。コンテンツは、”萌えビジネス”に似ている。マニアは、ディテールの積み重ねにこだわる。尼口さんのブログのように、たくさんの記事を書き続けて、しかも読む人に刺さるものを提供するというのは、異常な程に強い興味がないとできないと思う。

 尼口 コンテンツマーケティングにはリスクがある。ブログや特集をつくろうと必死になっているECサイトをよく見かけるが報われないことも多い。消費者が一番望んでいるのは商品そのものの情報。商品詳細ページこそが一番重要なコンテンツではないだろうか。

 青木 Eコマースは総合芸。マーケティングとオペレーションを両立させるのは簡単じゃない。当社も最初の5年くらいはシステムやフルフィルメントだけに投資をして、オペレーションの仕組みを作った。生産性が上がるからクリエーティブに時間が割けるようになる。利幅の薄い仕入れ商品を扱っているのに、仕組みがなければ、編集に力を入れる余裕なんて生まれない。

 尼口 大半のECサイトはアクセス数を増やせずに悩んでいる。どのくらいPVが必要なのか、どうしたらPVを上げられるかが分からないという人が多い。「♯cart」は、お店の存在を知ってもらうためのサービス。地方で地味においしいケーキを売っていてもお客さんは集まらないが、有名人が食べて「おいしい」とメディアでコメントしただけで、急に注目が集まったりする。ECのシステムではレコメンドエンジンも商品を薦めてくれるが、レコメンドにはコンテキスト(文脈)がない。

 青木 私もECにおいてどういうシステムが望ましいのか考えることがある。システムをロボットで例えると、アマゾンの仕組みは「AI(人工知能)ロボット」。レコメンド機能などを搭載し、人の手を極力不要にする方向性だ。楽天は「ラジコンロボット」。安価で汎用性はあるが、できることは限られている。一方、中規模の私たちのようなプレーヤーには、ガンダムのような「モビルスーツ」が必要だと思う。コアシステムには人間という高度なパーツを使っており、人の力を拡張できる。「♯cart」や、スタートトゥデイの「WEAR」もそうだが、ユーザーが自分の好きな人をフォローすることで、自分のページに何が流れてくるかを決められる。レコメンドエンジンが必要ないということがすごい。

 尼口 「♯cart」がやりたいことは、コンテキストのあるレコメンドエンジンといえるかもしれない。「#Cart」で広報業務をリプレースしたいと考えている。先日、「オンラインキャラバン」というサービスをリリースした。これは例えば、ネットショップが新商品をタレントの紗栄子さんに見てもらい、もし良かったらクリップ(お気に入り登録)して広めてください、とお願いできるサービス。ネットショップからのメッセージを見て、紗栄子さんが本当に商品を気に入れば、クリップしてくれ、多くのユーザーに知ってもらうことができる。もちろん気に入られなければクリップされないこともある。「♯cart」には、タレントやモデル、デザイナーなど100人以上が公式ユーザーとして登録されている。ネットショップはインフルエンサーと直接、接点を持てるため、効果的に商品をアピールできる。

 青木 とても面白いと思う。コンセプトがしっかりとプロダクトに落とし込まれている。われわれが自前のメディアを持っていなくて、なんとか商品をアピールしたいというモチベーションを持っていたとすれば絶対試していることだろう。どういう反応があるのか見てみたくなる。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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