【ヤフーVSアスクル 〈経営闘争〉】 ヤフー、実効支配進める/岩田体制を疑問視する元社員も

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退任を求められている岩田社長が会見で反論

 ヤフーは7月17日、連結子会社であるアスクルの定時株主総会において、アスクルの岩田彰一郎社長の再任に反対の議決権を行使すると発表した。業績の早期回復を求め、経営体制の若返りを求めた。岩田社長は、「ヤフーによる乗っ取りだ」と話し、業務・資本提携契約の解消を求めている。アスクルの株式を約45%保有するヤフーと、アスクルの第2位株主で株式を約11%保有するプラスが岩田社長に退陣を求める意向は変わらず、このままだと岩田体制の崩壊は揺るがない。アスクルの対抗措置にも注目が集まるが、元社員からは、「岩田社長はイエスマンだけを周りに置き、裸の王様になってしまった」という意見も聞こえてきた。

■ロハコが火種と説明

 ヤフーはアスクルの岩田社長の再任に反対する理由として、(1)アスクルの低迷する業績の早期回復(2)経営体制の若返り(3)アスクルの中長期的な企業価値向上(4)株主共同利益の最大化─を挙げている。アスクルのBtoC事業(ロハコ事業)の赤字幅が拡大していることなどを指摘し(図参照)、現体制での経営再建を疑問視している。
 アスクルは7月18日、記者会見を実施し、ヤフーの社長退陣要求の背景には、日用品ECサイト「LOHACO(ロハコ)」があると説明した。ヤフーは19年1月、アスクルに対してロハコ事業の譲渡を要請したという。
 アスクルの岩田社長は、「成長事業であるロハコをヤフーが乗っ取るつもりではないかと思った。業務・資本提携で交わした独立性をヤフーが侵害している」と問題点を指摘している。
 岩田社長は「ソフトバンクやヤフーは(中国EC最大手の)アリババのビジネスモデルを見習い、EC事業や物流事業を自社で運営したいと考え、ロハコ事業が欲しくなったのではないか」と分析している。


■ヤフーの手続きを批判

 アスクルは会見でヤフーの手続きが不当であると指摘し、業務・資本提携の解消を求めていく姿勢を強調した。
 ヤフーはアスクルの会見を受け、「ロハコ事業の譲渡を申し入れる方針はない」と説明した。あくまでアスクルの業績回復のために、岩田社長の退陣を求めているという。
 経営陣の刷新ではなく、岩田社長だけの退陣を求めている背景には、岩田社長を変えることで、アスクルの経営改善が実現できるという考えがあると強調する。
 アスクルの岩田社長は、「指名・報酬委員会という選任プロセスを無視して、定時株主総会直前に退陣を要求するといった対応は極めて不誠実」と批判する。
 業界関係者からも「アスクルは顧客主義やメーカーとの共創の取り組みなどが優れていた。ヤフーがこれ以上乗り出してくるとアスクルの積み上げてきたものが崩れるかもしれない」と懸念する声が聞こえてきた。


■アスクル元社員の証言

 両社の意見は平行線のままだが、アスクルの元社員からは岩田社長の経営手法を疑問視する声も上がっている。
 アスクルの元社員は、「遅かれ早かれこうなることは予想できていた。以前からロハコ事業の黒字化が不透明なことは周知の事実だった」と話す。
 さらに、「岩田社長は”イエスマン”を周りに配置し、耳の痛い忠言をする管理職を退けてきた。裸の王様となり、周りが見えなくなっている」と指摘する。
 アスクルの元社員は、「プラスから派遣され、アスクルの副社長に就いていた前田恵一郎氏は短期間で解任している。その頃から岩田社長に対するプラスの今泉公二社長の心象は良くなかったのではないか」と振り返る。
 ロハコ事業のヤフーへの譲渡案はプラスの今泉社長の発案だった。アスクルの現体制への疑問は以前からくすぶっていたのかもしれない。
 アスクルの元社員の話をうのみにすることはできないが、もしこの見解が事実であれば、ヤフーが岩田社長の退陣だけを求めている理由が分かる。


■焦点は売渡請求権

 アスクルは業務・資本提携契約の不履行を理由に、売渡請求権の行使も辞さない構えだ。ただ、その権利行使の前にヤフーと業務・資本提携契約の解消について協議の場を設けたいとしている。
 ただ、ヤフー側は協議をしないことを明言している。8月2日の株主総会までにアスクルが売渡請求権を行使するかに注目が集まる。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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