成長を続けるEC市場で依然として強い存在感を持つ巨大ECモール。その中で、ヤフー(本社東京都、小澤隆生社長)が活発な動きを見せている。7月6日には、「ヤフーショッピング」と「PayPay(ペイペイ)モール」の両ECモールを10月に統合し、新生「ヤフーショッピング」として刷新すると発表した。出店者からは急な仕様変更に対する賛否の声も上がっている。業界1位の奪取に向け、プラットフォームの再編を進めるヤフーの動きをまとめた。
■統合は「想定内」
「優良店舗が集まるプレミアムモール」として19年10月にサービスを開始した「PayPayモール」だが、統合という形でのサービス終了を「想定内」と受け止める事業者も多い。
ある家電EC事業者は、「同じ経済圏の中で異なるECモールがあることの合理性が見いだせなかった」と述べる。サービスが発表された当初は、「玉石混交の出店者を抱える『ヤフーショッピング』の切り捨て」といった声も上がっていた。
有力企業の出店誘致という大きな役割を果たした一方で、「ユーザーの分散」という課題が慢性的に生じていた。
近年、両モールへの集客として大きな役割を担っているのが、「LINE(ライン)」や「PayPay(ペイペイ)」といった巨大なユーザー基盤を持つグループ内サービスだ。送客先を一本化することで、連携の効果をより発揮できると期待する声も多く上がっている。
■課題は「質」の担保
「ヤフーという存在が競合に対して弱くなっている」─2月に行われたZホールディングス(HD)の決算説明会で、ヤフーの社長就任を4月に控えた小澤氏が現状をこのように述べた。
コマース事業の主軸である2サービスの統合は、そんな危機感から生じた競争力強化への一手とも捉えられる。
新モールの具体的な内容や移行プロセスは現段階で明らかにされていないが、「ヤフーショッピング」の物量と「PayPayモール」の機能性を両立する新たなECモールの構築がヤフーの描く青写真だ。
初期費用や月額固定費無料といった現「ヤフーショッピング」の料金体系を踏襲しながらも、デザインや検索機能などは後発である「PayPayモール」のものを基盤にするとみられる。
4億点超の商品数と「PayPayモール」から引き継ぐ有力店舗を抱える中、課題となるのがモールとしての「質」の担保だ。「PayPayモール」の強みであったサービス品質を、画一的に出店者全体に求めるようなことになるなら、既存出店者の大量離脱にもつながりかねないだろう。
「ヤフーショッピング」に出店するある家具事業者は、
(続きは、「日本ネット経済新聞」7月21日日号で)
ヤフー/モール統合に賛否の声/独自ルールの先鋭化に懸念も(2022年7月21日号)
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