【有力コールセンターの強みに迫る】第4回 <メタバースは通販業界でも浸透するか> トランスコスモス マーケティング戦略部部長 兼メタバース推進部副部長 光田刃氏/メタバースで新たな顧客接点創出へ(2023年6月29日号)

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 トランスコスモスは今年2月、メタバースの専門部署を立ち上げ、新たな顧客接点の創出を狙っている。多くの通販事業者は「ChatGPT」や「メタバース」などの最新テクノロジーをコールセンター企業がどのように活用し、新規顧客、既存顧客との関係強化を図るのかに注目している。トランスコスモスのマーケティング戦略部 部長兼メタバース推進部 副部長 光田刃氏にメタバース領域に進出した理由や顧客接点の場としてのメタバースの活用方法などについて聞いた。

■「DX」で「CX」向上へ

 ─新たにメタバースに進出した理由を伺いたい。
 当社は長年コールセンター事業を手掛けている。昨今のコールセンター業界では、電話をかけてきた人の「CX(顧客体験価値)向上」を年々、重視しており、当社としてもこの動きは見逃せない。「CX」を「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を通じて、さらに向上するべきだと判断し、メタバースに進出することにした。
 もう電話だけでの応対で最良の顧客体験を提供することは難しく、さまざまな手法を通じて、「CX」向上を図る必要があると考えた。


■メタバースは”無限大”

 ─具体的にどのようにメタバースで「CX」向上につなげるのか。
 今年2月、法人企業のメタバース活用を推進する専門部署「メタバース推進部」を開設した。そこでは、(1)メタバース活用のコンサルティング(2)企画の考案(3)コンテンツ制作(4)集客・イベントの立案(5)コミュニケーション支援(6)データ蓄積、利活用─などを顧客に提供する。
 メタバースといっても、導入企業によって戦略は異なる。各企業が叶えたいKPIや商材などを見極め、それに沿って最適な企画や集客方法を考案して、購入につなげていく。
 具体的な通販企業のメタバース活用方法は、物品の販売だけではなく、オンラインイベントなどを通じて、顧客接点を強化できるはずだ。導入企業によって異なるといっても、メタバースの最大の強みは、現実世界にはない壮大な仮想空間を作ることができることだ。
 そこで自身の分身となるアバターを作り、空間内を自由に動き回ることができる。そんなメタバースでは、一般的な通販サイトとは異なる顧客体験を提供できる。
 メタバースは現実以上の体験を提供することも可能だ。凝れば凝るほど魅力的な世界を作ることができ、その中に商品を置くことで、顧客に現実にはない新たな購入体験を提供できる。
 ある空間ではファンタジー空間、ある空間ではオンラインイベントなど、使い方は無限大だ。企業がどのような商材で、どのような戦略を取るかを考慮し、最適な店舗作りを提案する。
 ─専門的にメタバース活用を支援するが、それを実現できる理由は。
 web3やメタバース活用に精通したGCT JAPANと業務提携を締結したため、専門的なアドバイスを可能にした。メタバースからの既存サイトへの送客だけでなく、メタバース内での経済圏の構築・提案をGCT JAPANと取り組んでいく。


■メタバースの可能性は

 ─通販業界ではまだメタバースの活用方法で成功事例を聞かない。成功事例を聞かないため、通販業界ではメタバースは浸透しにくいと感じている。貴社はどう捉えているのか。
 確かになかなか成功事例は目にしない。当社で調査したレポートを見ると、メタバースを利用した人は10代後半~20代前半の世代が多いことが分かった。消費行動が活発ではない世代が最も利用しているのだ。この世代はメタバース空間を訪れるが、そこで商品の購入はしない。このことをまず前提に抑えておく必要がある。
 当社としてもメタバースが本格的に流行するのは、約3年後くらいなのではないかと予測している。だが、それまでに浸透する可能性は大いにある。そのため、現時点はメタバースの土台を作る時期だ。海外の事例などから導き出した知見をクライアントに提案し、将来に備えておく段階だろう。
 ─メタバースを活用した多くの企業は、「メタバースは既存顧客との接点強化のためのツールだ」と話している。貴社の「メタバース推進部」では新規顧客の獲得を支援できるのか。
 できる。当社の提供しているサービスの一つにWEBメタバースというものがある。それは専用アプリも必要なく、サイト上に埋め込むだけで利用できる。そのため、ヤフーやグーグルでメタバースに遷移する広告を運用することで、気になった消費者をメタバース空間へ誘導することができる。イメージはこちらからご確認いただきたい。
 ─現時点で企業からのメタバース活用の依頼はあるか。
 現在、数社から依頼が寄せられている。通販業界においては、新規参入企業の増加などにより、他社との差別化が難しくなっている。新たな顧客と接点を図れる場としてメタバースは有効だろう。
 現時点では、メタバース利用者は若い世代が多いが、さまざまな戦略で若い世代からの購入を促したり、その世代が大人になるまでユニークな空間を構築したりして、顧客と関係性を持ち続けることが大事だと考えている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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