【裁判外紛争オンライン化】 「ODR」に期待と懸念/プラットフォーマー活用なるか

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 訴訟手続きによらない裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種「オンラインでの紛争解決(ODR)」の導入と活用を目指した、ODR活性化検討会が9月27日から政府により実施されている。人工知能(AI)やITツールを活用し、オンライン化することで、利便性を高め、手続きを簡略化していく。顧客満足向上や、国民生活センターに寄せられる問い合わせが減少することが予想され、国内プラットフォーマーやEC事業者による活用も期待されている。一方で、ODRのシステム導入によるコストや、「現行の顧客対応では十分でないのか」という抜本的な問題に至るまで、ODRが浸透するにはさまざま課題があるようだ。一部の通販業界関係者からは、「紛争」という概念がなじまず、ODRは利用されにくいのではないかという意見も聞かれた。

■ODR導入のメリット

 ODR活性化検討会委員を務める、一般社団法人ECネットワークの沢田登志子理事は、ECプラットフォーマーや事業者がODRを導入することで考えられるメリットについて、消費者からのクレーム対応を自社のサイト上だけでできる点を挙げている。
 行政機関に苦情や悩み、相談が寄せられることにより、事業者が規制対象となってしまうことがある。ODRを自社プラットフォームやサイトに設けることで、顧客はいつでも意見を寄せることができる。ODRの利用価値が見いだされ、顧客の課題を自社内で早期解決できる。これを踏まえ沢田氏は、「外部にクレームが行きにくくなるので、顧客満足度が上がるのは間違いない」と説明する。
 もう一つの利点として、ODRにより記録が残ることも挙げている。現状、プラットフォーマーは、顧客と出店事業者とのトラブルを、当事者同士のやり取りで終わらせるケースが少なくない。その後のやり取りは知りえないが、ODRを導入すれば、プラットフォーマーが第三者の立場で紛争解決に導くので、分析対象とする情報が増える。プラットフォームの利用者が増えるきっかけにもなるとしている。
 導入の課題は、国内プラットフォーマーが、ODR導入のためのコストをかけて踏み切るかどうか。沢田氏は、「悩みを抱えている段階ではないか」と分析しつつ、「現状でも、カスタマーサポートを手厚く行っているという自負があるプラットフォーマーもいるはず。これ以上踏み込むかどうか、どこまでをやらなければならないと思っているかは見えない」と話している。


■〈ヤフー〉「議論開始は歓迎」

 ODR活性化検討会の委員を出しているヤフーは、ODRについて「裁判手続きのIT化の議論もあいまって、政府を含めてODRの検討会、議論が始まったことは、非常に歓迎」と本紙にコメントしている。

(続きは、「日本流通産業新聞」10月17日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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