【この人に聞く】 厚生労働省 監視指導・麻薬対策課 小川雄大危害情報管理専門官〈上〉/「健康の維持増進」の範囲が前提

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 いわゆる「歩行能力の改善」問題で、18年11月に機能性表示食品11社13製品が、消費者庁から撤回要請を受けてから、約半年が経過した。3月31日までに全製品の撤回が確認されている。これは厚生労働省から消費者庁に対して「薬機法違反の恐れがある」と伝えたものであるが、担当者の一人である厚生労働省監視指導・麻薬対策課の小川雄大危害情報管理専門官に改めて話を聞いた。

 ─監視指導・麻薬対策課の業務について教えてください。
 小川 当課には約40人が配属されており、幅広く業務を行っています。薬事監視が主たる業務です。医薬品や医療機器について製造管理・品質管理が基準通りに行われているかどうかのチェックなども、自治体やPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)と連携しながら行っています。薬機法に関する取り締まりの一部は自治体で行っていますが、複数県にまたがる場合などは、当課で都道府県間の調整を行ったりもしています。自治体からの「こう考えるがいいか」といった照会に対する対応も行っています。
 ─その中で、小川さんの仕事は?
 小川 今は、いわゆる健康食品も含む薬事該当性の判断や、偽造医薬品や未承認医薬品等の対策などを担当しています。同じラインの担当者は私を含め3人です。薬事該当性の判断は自治体で行っていただいていますが、当省に照会があったものについて回答したり、必要に応じて該当性の考え方などを通知で示したりしています。いわゆる健康食品の薬事該当性も対象となりますし、個人輸入品の未承認薬の投薬といったところも対象となります。化粧品や医薬部外品に関する部分も対象になります。
 ─さて、「歩行能力の改善」問題についてお聞きしたいのですが、医薬品と丸被りの表現だったから危なかったという認識で良かったでしょうか。
 小川 「危なかった」というのはどういう意味か分かりませんが、承認されている医薬品の効能効果と同じ表現だったから、医薬品と誤認される恐れが高かったということは言えると思います。
 ─医薬品と類似する表現であっても、例えば前段に「運動との併用が必要」などの記述があれば、判断が違ったかもしれないという認識で良いですか。
 小川 前段が書いていれば良いというわけではなくて、最終的には表示や広告の全体を見て判断されることになりますが、文脈としてどう捉えられるかが重要です。文脈として「健康の維持・増進」の範囲であることが明らかであったならば、判断は違ったと思います。
 ─46通知的には、本来、機能性表示食品や特別用途食品は対象外のはずです。その機能性表示食品について、薬機法違反を指摘されるようでは、機能性表示食品化する意味がないのではないですか。
 小川 確かに46通知では機能性表示食品や明らか食品は、原則として医薬品と判断されないものと位置付けています。ただ、これは機能性表示食品制度の規定を順守していれば薬機法に抵触しないことによるものです。今回の件についても、事業者が機能性表示食品制度のルールをしっかり守っていれば、指摘を受けることはなかったと思っています。
 ─具体的にはどのような問題があったのですか。
 小川 機能性表示食品は「健康の維持増進」の範囲内ということが前提だと思いますが、そこを逸脱して、医薬品的効能効果をうたえば、当然薬機法違反に問われることになります。
 ─届け出が受理された案件でもそういう判断になるのですか。
 小川 機能性表示食品制度は届け出制であり、消費者庁において審査を行うものではないため、医薬品的効能効果であるかどうかについて判断しているわけではありません。


 2007年、厚生労働省に入省。14年、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課。18年7月から、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課にて危害情報管理専門官を務める。

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